こんな本が角川から出てたとはね。う~ん、まったく知らなかったぞ。ここに収録されてる作家陣の顔ぶれは結構豪華なんじゃないの?ここで収録作を紹介しておこうか。
◆ 角田光代 「あの八月の、」
◆ 有川 浩 「クジラの彼」
◆ 日向 蓬 「涙の匂い」
◆ 三羽省吾 「ニート・ニート・ニート」
◆ 坂木 司 「ホテルジューシー」
◆ 桜庭一樹 「辻斬りのように」
◆ 森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」
以上7作。この中で有川浩、桜庭一樹、森見登美彦の三方の作品はそれぞれ単行本で刊行されてるのはみなさんもご存知のとおりである。本書が刊行されたのが2006年の2月だから、それぞれの単行本が刊行される前にこういう形で本になってたというわけだ。
順番に簡単な感想を述べてみると、巻頭の角田作品はとりたててどうってことない作品だった。でも、先に読んだ「東京ゲスト・ハウス」のときにも思ったのだが、この人って結構あけっぴろげなのね。なんというか奥ゆかしさとは対極にある感じで、そこがまた好きなところでもある。この短い作品でもそういう雰囲気は充分感じられた。もっと長編作品読まなきゃいけませんね。
有川作品はこの短編が初なのだが、これは結構良かった。この作品、あの「海の底」のスピンオフであり、作中でもそのことについて言及されてる部分があるのだが、その部分の扱い方がすごく好きだ。「海の底」は読んでないのだが、なんともソソられてしまった。うまいねぇ、まったく。これを読むまで「海の底」読む気はなかったのだが、どうしても読みたくなってしまった^^。
本書の中で一番めっけもんだったのが日向作品である。この人まったく未知だったのだが、『女による女のためのR-18文学賞』で大賞をとった人だということで、そりゃあノーマークだったわけだ。でもそんな彼女の作品、これが読んでみるとすっごく良かった。親の都合で北陸の町から東北の寒村に引っ越してきた中学生の女の子が主人公なのだが、これが感傷に流されるわけでもなく青春の苦味と少しだけ見える晴れ間を鮮やかに描き切っており、かなり読ませた。ラストも『その後』を描いていて、痛く染み渡る。この人要チェックである。
三羽作品は、微妙。ほんとはこの作品が読みたくて本書を手にとったのだが、ちょっと当てが外れた感じかな。相変わらずエキセントリックな登場人物が出てきたりするのだが、少々尻すぼみな印象だ。この人は長編向きなのかな?と無理やり自分を納得させる^^。
坂木作品もイマイチ乗れなかった。家族思いで面倒見がよくて、いつも自分を犠牲にしてた女子大生がはじめて自分のために使える夏休みに沖縄の超アバウトなホテルでバイトをする顛末が描かれている。充分おもしろい作品なのだが、どうも主人公の女の子が好きになれなかった。うまくいえないが、ちょっと違うと感じてしまった。感情の起伏に違和感があったのかな?
桜庭作品は読んだ人はおわかりだと思うが、あの「七竈」の序章部分である。これだけを単体でとらえると、どうってことない作品なのかもしれないが、この先にまだ物語が広がっているのを知っている身にとっては大いに期待が高まった。はやく読まねばなるまいて。
ラスト森見作品はいわずと知れたあの大ブレイク作の一章である。だからこれは割愛ね^^。
というわけで、有川作品と日向作品に大いにソソられてしまった^^。いつになるかわからないが、そのうち読むことでしょう。