読書の愉楽

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三雲岳斗「聖遺の天使」

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 この人ラノベから出てきた人だけど、本物だね。初めて読んだ本書で確信した。だって、15世紀のイタリアを舞台に、これだけしっかりしたミステリ書いてんだもん、こりゃ本物だわ。まして探偵役は、あのダ・ヴィンチときたもんだ。う~ん、素晴らしいぞ。

 

 そして驚くことに、本書はしっかり本格ミステリになっている。それも『館』物。で、真相はどうだったというと、この館トリックはあの島田御大の「斜め屋敷の犯罪」並のインパクトがあった。

 

 壮大で、大胆で、館の構造が活かされていて、ミスリードについてはちょっと弱い部分もあったけどこれだったら合格でしょ。その他の謎についてもほぼイケてると思ったし、これはなかなかいいんでないの?

 

 ただ欲をいうなら、推理の過程が少し弱いかな。天才ダ・ヴィンチは、はやい段階から謎を解いてしまっているのだが、伏線が弱いものだから読者としては正味のおいてけぼりに感じてしまうのだ。ここらへんはもう少し含みをもたせて再読して確認させるくらいの伏線を張ってもらいたかった。

 

 また、ダ・ヴィンチが神々しいばかりの美しい青年だという設定もちょっと違和感があった。これならあのデヴィッド マドセン 「グノーシスの薔薇」にでてくる、ダ・ヴィンチの方がまだ信憑性があるようにおもってしまった^^。

 

 ともあれ、そういった瑕疵もあるのだが全体的には満足したミステリだった。この人は本格マインドをしっかり身につけた作家だと思われる。他にもいろいろ書いてるようだし、これは読まねばなるまいて。