キングの短編が、なんともお粗末なシロモノだということは何度も書いてきた。中には 「道路ウィルスは北にむかう」なんてゾクゾクするような作品もあるのだが、総じて彼の短編はB級作品のオンパレードである。やはりキングの真骨頂はその執拗な書き込みであり、ディティールの積み重ねによって構築される濃密な世界と際限なく繰り出される饒舌な騙りの技術が好きだと思えなければ、彼の作品とは付き合ってはいけないだろう。ぼくが信頼を寄せる鬼の書評家北上次郎氏もそこらへんが合わないとみえて、キングよりクーンツが好きだと公言して憚らない^^。
そんなキングの魅力があやうい均整で保たれているのが、中編作品なのである。といっても、彼の書く中編はほとんど長編といって差し支えない長さのものも少なくない。そして長い作品ほど安定していておもしろい。彼の中編代表作といえば、やはり「闇の展覧会」に収録されている「霧」になるだろうか。この作品は設定だけを抜き出してしまえば、小学生が思いついたようななんともくだらないB級物なのだがそれをこれだけ読ませてしまうのはさすがである。その他『恐怖の四季』に収録されている「スタンド・バイ・ミー」や「刑務所のリタ・ヘイワース」などは、いまでは誰もが認める名作だろう。でもぼくの個人的な好みからいえば、『恐怖の四季』の四作品の中でイチオシなのは「ゴールデン・ボーイ」である。
それはさておき、今回紹介する「図書館警察」は、その『恐怖の四季』シリーズに続くキング中編集第二弾『Four Past Midnight』のうちの一冊である。おそらく、この二分冊のうちどちらが好きかと問われたら、多くの人がもうひとつの「ランゴリアーズ」と答えるに違いないと思われるのだが、ぼくは「図書館警察」のほうに軍配を上げる。表題作である「図書館警察」は、まずこのタイトルがたいへん魅力的だ。
どうもこのタイトルは当時アメリカで流行ってた一種の都市伝説からとられたみたいなのだが、結構インパクトあるタイトルだと思うのだが、どうだろうか?内容のほうも子ども世界特有の意味づけの恐怖が不気味に描かれていて、血でグチャグチャのホラーより数倍エグイ印象をもった。魂に訴えかけるというか生理的な気持ち悪さや心理的な怖さとは次元の違った、もっと人間の根源に訴えてくる恐怖が描かれているのだ。子ども時代の恐怖とは、そういうものだったのかもしれない。
もう一編の「サン・ドッグ」もなかなかもどかしい不気味さを感じさせる好編である。ここで描かれるのは一種の心霊写真だ。しかしこれがただの心霊写真ではなく、直接身の危険を感じさせる恐怖として心霊写真より数段怖い。なにがどう怖いのかは、読んで確かめてもらいたい。この怖さの盛り上げ方は怪談では定番なのだが、それがとても効果的に使われている。
というわけで長々と書いてしまったが、ようするになんだかんだいって、ぼくはキングが大好きなのだ。
もう良い悪いなんて関係ないくらい好きになっちゃってるのだ。しかし、そのフィーバーぶりもいまではすっかり沈静化してしまったのだが^^。