読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ダン・シモンズ「ハイペリオン」

なんでもこなす器用な作家ダン・シモンズのガチガチのSFである。しかし、本書は決して片手間に書かれた筆汚しなどではない。並のSF作家が束になってかかっても太刀打ちできない程の素晴らしいSF叙事詩なのだ。本書のすごいところはSFという特定のジ…

松浦理英子「親指Pの修業時代」

本書が刊行されたのは1993年と、かなり昔だ。この画像は昨年出た新装版の写真であって、ぼくが読 んだのは単行本だった。 そんなことは、どうでもいいか。とにかく当時、ぼくは本書を興味本位で読み始めた。だって、普通の女 子大生の右足の親指がある日…

ニコール・クラウス「ヒストリー・オブ・ラヴ」

「本が好き!」に登録して、初めての献本が本書「ヒストリー・オブ・ラヴ」だった。 本来ならタイトルだけで敬遠してしまうところなのだが、本書は帯を見てちょっと待てよと思った。『壮大な運命と邂逅の物語』『その物語はいつか輝く』。これらのコピーを見…

クライヴ・バーカー「ミッドナイト・ミートトレイン」

クライヴ・バーカーはなかなかユニークな作家で、小説を書く前に色んな場面を絵に描いてみるのだそうだ。そうやってイマジネーションを高めていくらしい。なるほど、それは物語を構築する上でかなり有利なことだと思う。大方の作家はその作業を頭の中で済ま…

大好きな監督『ブライアン・デ・パルマ』について

最近は映画館からも遠のいてしまって、めったに映画も観なくなってしまったのだが、一頃は映画にとち 狂っていた時期があって、色んな作品を貪るように観たものだった。 その時期ハマっていた監督がブライアン・デ・パルマだった。彼の作品でリアルタイムに…

カーリー・トンプスン「黒い蘭の追憶」

本書はミステリである。しかし、本書で提示される謎は、これがいったいどんな風に説明つけられるんだろう?とこちらが心配になってしまうほどオカルトホラーど真ん中の謎なのである。 いったいどんな謎かというと、19年前に惨殺された五歳の娘の声が聞こえ…

今年初の古本購入記事

暮れに読んだ鈴木輝一郎の「三人吉三」が思いのほか奇想天外でおもしろかったので彼の本を集めてい る。この人もともとミステリー畑からデビューした人みたいで「めんどうみてあげるね」で日本推理作家 協会賞を受賞している。その後時代物に転向したみたい…

永年捜索中本について

本好きの方なら、誰でも一冊は永年探し求めている本があるはずだ。読みたいのに読めないというジレン マにやきもきしてる方は数知れずだと思う。そう、ぼくにもそういう本が何冊かある。存在を知ったこと により、どうしてもその本を手にしたいと思っている…

アダマ・ユキエ

裏の山で遊んでいると、友達のおーちゃんがいなくなった。 気づくのが遅かったので、おーちゃんはアダマ・ユキエさんに連れていかれてしまった。 アダマ・ユキエさんは山に潜む『連れさり人』で、二人以上で行動していると大丈夫なのだが一人になってしまう…

「マイ・ベストミステリ10」上位5作発表!

いままで読んできた海外ミステリの中からベスト10を選ぶというはじめての試み。でもよく考えてみるとぼくにはこういうことをする資格はないのかもしれません。なぜなら、ベスト10を選出できるほど多くの作品を読んでるとはいえないからです。例をあげる…

「マイ・ベスト・ミステリ10(海外編)」

本楽大学ミステリ学部において、しろねこ学校長から課題が出されたわけですが、その中に『マイ・ベスト・ミステリ』なるものがありましたね。おもしろそうではないですか^^。本読みの一員として、こういうマイ・ベスト企画ってのは大変魅力を感じます。 し…

蓮見圭一「水曜の朝、午前三時」

読み終わって胸の奥に残っていたのは、空虚な反感だった。なんとも言えない後味の悪さだけが強調され て、虚しいのにとても悔しい気持ちが残った。どうしてこの本が版を重ね多くの人に受け入れられている のかわからない。愛のせつなさ?歓びが心にしみるラ…

ささやかな仁木悦子コレクション

まだ一冊も読んだことないのに、仁木悦子の本を集めている。古本屋で見つけると買うようにしている。 しかし、仁木作品はあまり出回ってないみたいだ。まず、そんなに見かけることがない。たとえあったとしても、それはたいてい「銅の魚」である。この本は現…

消えた息子と小さい老人

青銅の壺だ。かなり重そうだ。でも、よく見るとこれは動かせないんだなとわかった。なぜなら、ボルトで床に固定してあるからだ。いったい、何に使うんだろう?普通は花を活けたりオブジェとして飾ったりするのであって、すべり台の上にボルトで固定したりは…

『本楽大学ミステリ学部』~ミステリとの出会い~

本楽大学ミステリ学部がしろねこ学校長主催でいよいよ本格的に活動を開始しましたね^^。 なんともすごい学部だ。歴戦練磨のミステリの達人が数多く在籍するというこの学部の活動を指をくわえて見ていたのですが、ぼくもちょっと参加してみたくなりました^…

古橋 秀之「ある日、爆弾がおちてきて」

電撃文庫で短編集ってのもめずらしいのではないか?本編には七つの短編がおさめられている。 すべての作品に共通しているのは、ここで描かれるのがボーイ・ミーツ・ガールの話だということだ。 シチュエーション的にそれぞれバラエティーにとんだ内容になっ…

三羽省吾「厭世フレーバー」

この人の描く世界は、なんとも魅力的だ。前作の「太陽がイッパイいっぱい」もかなり良かったが、本作 はまた違ったテイストながら、こちらも花マルあげたいくらい良かった。 今回は『家族』がテーマである。それもちょっとワケありの普通でない家族だ。リス…

野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」

もうすでに第三弾が出てるとの情報を冴さんから仕入れたので、うかうかしてられないとて急いで読んで みた。 前回が純然たるミステリだったのに対して今回はその部分では少し弱い。暗号などが出てくるが、これは お遊びの範囲。しかし、話的には前回よりもさ…

マサミ・ストリート

どうしたことか道に迷ってしまった。ぼくはマサミ・ストリートに行きたかったのだ。なのに、またいつ ものように迷ってしまった。 以前から方向音痴で何度もひどい目にあっている。一番ひどかったのが丁度15年前、当時仕事をしてい た現場から、先輩のいる…

道尾秀介「シャドウ」

おもしろかったのだが、手放しで褒める気にはなれなかった。 話としてはとてもわかりやすく、淀みなく進行してゆく。所々に謎を配置して、ひっかかりを残しておきながら最後にそのすべてを見事に解決する。そう、この作品の推理に破綻はない。すべてがおさま…

コニー・ウィリス「最後のウィネベーゴ」

コニー・ウィリス、コニー・ウィリス、コニー・ウィリス!本書を読んで確信した。ぼくは彼女が大好きだ。気づくのがなんて遅かったのだろう。こんなに素敵なSFは久しぶりに読んだ。こんな素晴らしい小説は久しぶりに読んだ。彼女の本は「犬は勘定に入れま…

貫井徳郎「空白の叫び」

この本は、時間をかけて読んだ。10月半ばくらいから読んで読了したのが大晦日だったから、二ヶ月半かかったことになる。まっ、その間に他の本を16冊読んでいたから、これが厳密な読書時間ではないのだが。どうしてそんなことになったのかというと、あま…