もうすでに第三弾が出てるとの情報を冴さんから仕入れたので、うかうかしてられないとて急いで読んで
みた。
前回が純然たるミステリだったのに対して今回はその部分では少し弱い。暗号などが出てくるが、これは
お遊びの範囲。しかし、話的には前回よりもさらに悲惨さがアップしていて、まったく違う話ながら「砂
糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を思い出してしまったくらいだった。
今回モチーフに使われているのは「嵐が丘」。この本を読んだのは、もう十五年ほど前のことだ。つい何
年か前に鴻巣友季子さんの新訳版が出たので、再読したいなと思いつつ今に至っている。
いってみれば「嵐が丘」の世界は昼メロの世界だ。愛憎渦巻く相関関係とイギリス特有の荒涼としたヒー
スの景色が絶妙にマッチングした因縁絵巻なのだ。この一筋縄ではいかない作品を、いったいどういう風
に料理しているのかと興味津々だったのだが、それは読んでみてのお楽しみということしておこうか。ぼ
く的には、なかなか健闘してるんじゃないかと思った。というか、こういう処理の仕方しか無理なんだろ
うね。
相変わらず遠子先輩は文学を食べて、愛情あふれる文学の薀蓄を惚気ている。これは純粋に楽しい。読ん
でない作品について一発かまされたりすると、こちらとしてもその作品が気になって仕方なくなってしま
う^^。本書のサイド面でのお楽しみということだ。
心葉君の過去についてもまだ詳しいことまではわからないが、気をもたせる展開が予想される。気をもた
せるといえば、心葉君とななせの関係も読者にしてみれば一目瞭然なのだが、心葉本人が気づいてないの
だから仕方がない。この関係についてはおそらくこの先の展開で大きなカタルシスを与えてくれるのでは
ないかと密かに期待している。
とりあえず、本書は及第ということにしておこう。はやく第三作読まなきゃ!