この本は、時間をかけて読んだ。10月半ばくらいから読んで読了したのが大晦日だったから、二ヶ月半かかったことになる。まっ、その間に他の本を16冊読んでいたから、これが厳密な読書時間ではないのだが。どうしてそんなことになったのかというと、あまり興味が持続しなかったからだ。
本書は三部構成となっている。第一部「胎動」は、三人の少年の日常と彼らが殺人を犯すまでの軌跡を丹念に描いている。第二部「接触」は、その三人が中等少年院に収容されてからの日々を。第三部「発動」では少年院を出てから彼らが辿る末路を描いている。上巻に充てられているのが第一部と第二部。下巻は第三部のみ。
上巻を読了するのは案外はやかった。問題は下巻にはいってからだ。
まず、どうしても違和感として残ったのが三人の中学生の老獪さだ。ちょっと、これは度が過ぎてるんじゃないだろうか。自分の中学時代に照らし合わせて考えてみるなんて愚は犯さないが、ここで描かれる彼らの言動はあまりにも現実離れしているように感じた。特にそれを意識したのは下巻にはいってからである。彼らはあまりにも世事に長けていてリアリティに欠けていると思った。それが鼻につくと途端に興醒めしてしまった。物語はおもしろいにもかかわらずだ。
そう、本書は話の筋としてはおもしろい。リーダビリティは充分に備えている。ラストに向けていささか駆け足気味のきらいはあるが、この長丁場をダレることなく描ききっている。
ただ、収束に向けていくつかの事柄が点と線で結ばれることになるのだが、そこにドラマティックな要素を盛り込みすぎたのか、多くの事柄が御都合主義的な処理として目についた。第一部、第二部の緊張感や力強さに比べて、第三部が物足りなく感じてしまうのもそれゆえの事ではないかと思う。同様に主要登場人物以外の脇役の処理にしても不満が残った。詳しくは書けないが、皆おしなべて尻すぼみである。中途半端な処理が少し腹立だしい。
話自体がおもしろいのに、こういうリアリティに欠ける設定や性急な事後処理が目についてしまってどうもノレなかった。以上、素直に感想を書いてみた。でも、これからもこの人の本は読んでいくからね。