読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

古橋 秀之「ある日、爆弾がおちてきて」

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電撃文庫で短編集ってのもめずらしいのではないか?本編には七つの短編がおさめられている。

すべての作品に共通しているのは、ここで描かれるのがボーイ・ミーツ・ガールの話だということだ。

シチュエーション的にそれぞれバラエティーにとんだ内容になっているのだが、内容的には少し軽い。

ささっと、紹介してみようか。


■「ある日、爆弾がおちてきて

 突然、空の彼方から落ちてきたのは、昔好きだったあの子に似た新型爆弾だった。ときめきやドキドキ

感で針が進む起爆装置を胸にはめ込んだ少女とデートする破目になってしまった主人公。ちょっと甘酸っ

ぱい感傷が残る作品。


■「おおきくなあれ」

 身長差約三十センチという特大の彼女が罹ったのは最近流行りだした『阿呆風邪』。一過性のこの風邪

に罹ると、くしゃみをする度にどんどん精神年齢が退行していくという。三歳にまで退行してしまった彼

女と俺の奇妙な看病記。退行することによって、大柄で乱暴な彼女が守ってあげるべき対象に変わってい

く過程が少しせつない。


■「恋する死者の夜」

 死人が蘇る世界。死した者はリピーターとなって、毎夜同じ場面を繰り返す。やわらかい月の光に照ら

されて、まもるは彼女と遊園地に向かう。彼女が死んだ場所である観覧車に乗るために。


■「トトカミじゃ」

 学校にある別館の古い図書館。そこの一番奥まった突き当たりの壁にある素朴な神棚。そこには、小さ

い女の子の姿をした守り神がいた。破壊と再生の果てにある小さなサプライズがあったかい気持ちにさせ

てくれる。


■「出席番号0番」

日毎に人を変え憑依して学校生活をおくる肉体をもたない憑依人格の日渡千晶。彼女がいるところ、必ず

問題が発生する。そんな彼女に振り回される主人公。バカバカしいアイディアなのに読んでみると案外ま

とも。


■「3時間目のまどか」

 授業中にぼーっと窓を見ていると、そこに見知らぬ女の子が映っていた。3時間目だけに現われる窓の

中の女の子。音のない世界で、なんとかコミュニケーションをとろうとする二人。窓の中で授業を受けて

いる彼女は、いったい誰でどこにいるのか?ぼくはこの作品が一番好きである。


■「むかし、爆弾がおちてきて」

 過去に起きた大戦で投下された爆弾により、結晶化されたような時間の陥穽に閉じ込められた少女。そ

の中では、六十億分の一秒という恐ろしい緩慢さで時が流れており、瞬きする瞬間が百年にも相当する。

主人公の男の子のとる行動は、はっきりいって恐怖以外のなにものでもない。ハッピーエンドっぽいラス

トが安易な印象を受ける。


以上7編、さほど心に残る作品でもなかったなぁ。とても軽くてすぐ読めてしまうところがお手軽なのだ

が。もう少しいいものを期待していたので肩透かしだった。