読書の愉楽

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ロバート・R・マキャモン「魔女は夜ささやく」

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17世紀末のアメリカ南部。とある村で捕まえられた魔女といわれる女。

魔女裁判を執り行うべく、この地にやってきた判事と若き書記のマシュー。しかし、マシューにはこの獄

中にいる女が魔女だとは、どうしても信じられなかった。

やがて、彼女を信じ愛しはじめるようになるマシュー。彼女は、本当に魔女なのか?それとも、隠された

真実があるのだろうか?

マキャモンが、見事に返り咲いた記念すべき傑作である。

17世紀のアメリカを舞台に、ミステリアスな物語が綴られていく。

暗黒時代といってもいい未開の地アメリカ。人々は闇を恐れ、悪魔の存在を信じ、すがるものといえば神

だけの時代なのだ。


そういう舞台でしか成立しえないこのミステリは、逆にいえば、その利点を最大限に引き出して読む者の

心を捉えてはなさない。

主人公のマシューは、この時代にそぐわない好奇心のかたまりのような青年で、すべての断片が収まるべ

きところに収まらないと気がすまない性分である。あまり友達になりたくないタイプだが、彼が若さゆえ

の過ちと、若さゆえの情熱と、若さゆえのまっとうな正義感をふりかざして、闇の中を進む姿は読

んでいて気持ちがよかった。

ミステリとしての完成度も、たいしたものだった。伏線が巧みに張られ、ラストに向けてあらゆる謎がピ

タリと納まる。

マキャモン復活。ほんとに、見事に返り咲いた。今後もおおいに期待したい。