読書の愉楽

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上位五作発表!山田風太郎、忍法帖ベスト10

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 それでは、風太忍法帖上位五作品の発表いってみましょうか。再投稿ということで、ほんとうは画像も載せたかったのですが、いまではこれらの本は実家に置いてあるんで写真撮る時間がありませんでした^

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■第五位■ 「銀河忍法帖

前回紹介した「忍法封印いま破る」の前日譚なのが本書。

徳川幕府の智嚢(ちのう)といわれた大久保長安佐渡の金山を開発し、幕府の財源として多大な功績を残した彼は、自分の精力維持のために美女を生きながら酒に漬けこんだ『女精酒』を飲んでいた。なんていうあまりゾッとしない妖艶で無惨な場面が出てくる本書は、忍法の世界に科学も盛り込んだ意欲作でした。長安自らが開発した「はがね魔羅」、「硫酸瓶」、「火炎筒」などが登場し、かつ服部半蔵率いる伊賀五人衆のあやつる「忍法連枷」、「忍法縛り首」、「忍法合奏刀」などとあわさって、ひょんなことから長安を倒すことになった無頼者「六文銭の鉄」に立ち向かってきます。

本書も、構図的には復讐に加担するヒーローというものですが、おなじみのパターンでありながらやはりグングン読ませるリーダビリティはさすがです。もっともっと読みたいと思ってしまうから不思議ですね。



■第四位■ 「伊賀忍法帖

ぼくが本好きになるきっかけを与えてくれたのが、本書です。いまのぼくがあるのも、この本のおかげ。不純な動機を一掃して、小説の持つ力をまざまざと見せつけてくれました。ここらへんのことは何回も書いています。

で、そんな運命的な出会い(?)をした本書なんですが、これはねえ、開巻早々誰もがギュッと胸ぐらつかまれて引っぱられるほどキャッチーな出だしなんですよ。

史実にも残っていて実在したといわれている幻術師果心居士。この戦国のメフィストフェレスのことは司馬遼太郎山田正紀もおのが作品でとりあげています。本書では、その果心居士が重要なファクターとなっているため、まず彼の紹介からはじめられるんですが、これがとてもおもしろい。文献から引用されるこの人物のエピソードはアンビリバボーな話が満載で、もうこれだけでズルズル物語の世界に引きずり込まれてしまいます。

また、物語自体もメインプロットは復讐劇で描かれるのですが、そこに作者は巧みな演出でもって主人公にかなりのジレンマをあたえるんです。ここらへん、読み手も焦らされ、かつたまらなくせつなくなってしまいます。構図的には、風太忍法帖の中では甘い方なのかもしれませんが、なんせ初めてであった忍法帖ということで、自然と点も甘くなってしまいました^^。このへんは独断と偏見ということでお許し願いたいと思います。



■第三位■ 「風来忍法帖

本書の主人公は七人の香具師(やし)。野卑で粗野で人間としても最低のやつらなんですが、それが読んでるうちに、気のおけない、憎みきれない人間として映ってくるから不思議なもんです。前半彼らが巻き起こす騒動は、ユーモアに満ちて陽気さにあふれています。

しかし、後半は一転して壮絶無比な死闘がくり広げられ、陽気な音楽が転調をくり返し暗転していくように、無惨に物語は閉じられます。

好きですねえ、この作品。七人の香具師の個性的な性格もいいし、彼らが仕える麻也姫の美しさも際立っている。物語も、ユーモアとペーソスが背反してる構成が秀逸。忍法帖の中で、本書が好きという人が多いのも頷けます。ふと思ったのですが、いまとても熱いあのマンガ「ワンピース」も、構図的には山田忍法帖と同じなんじゃないでしょうか?とても勝てそうにない相手と対戦するっていうのは、よく似てるんじゃじゃいかと思うのですが・・・。



■第二位■ 「柳生忍法帖

本書は、柳生十兵衛を主人公とするトリロジーの第一作目です。作者の言葉をかりれば、とんでもなく強いやつに、とんでもなく弱いやつを戦わせたらどうなるかというのをやってみたかったそうで、でもやっぱりそれでは話が成立しないんで、監督役に柳生十兵衛を配したということなんです。

そんな本書は、数ある忍法帖の中でも一番といってもいいくらい強烈なサスペンスに彩られています。風太郎の友人でもある作家の高木淋光は、本書を読んで中に登場するある場面に対し、「主人公がこれほどの窮地に立たされる場面をいまだかつて読んだことはなかった。そこで、いったんページを閉じて自分なりに回答を出してみたのだが、作者の用意した正解にはとうてい及ばなかった」と語っています。敵は、会津四十万石の藩主加藤明成に仕える武術の達人集団『会津七本槍』。かたや十兵衛が後ろ盾することになる素人集団は、一族を七本槍に虐殺された堀主水一族の生き残りの七人の美女。

いったい、どうやったらまったくの素人が武術の達人を負かすことができるのか?本書で初めて十兵衛にであってその飄々としたユーモラスな人格と、八面六臂の超人的な活躍にシビれまくってしまいました。

う~ん、また読みたくなってきた。これ読んだのはかなり前なんで、もう一回読み返してみようかな。



■第一位■ 「魔界転生

これは、先に紹介してるんで詳しくは書きません。やはりこれが、風太忍法帖最大長編であり、最高傑作なんです。風太忍法帖は長ければ長いほどいい。これだけは自信をもって言えますね。

ふう~、長かった。というわけで、マイベスト10忍法帖が出揃いました。厳密にいうと忍法帖じゃないんで、ここではあげなかった「叛旗兵」なんて、もしここに入れるなら五位以内には入っていたでしょうが、これはまた次の機会に。

それにしても、この山田風太郎にだけは、いくつになってもときめいてしまいます。やっぱりこの人は、いつまでたってもぼくにとって小説の神様でありつづけるんでしょ。
長々と書いてきましたが、最後までお付き合いくださったみなさま、どうもありがとうございました。