家庭諧謔探偵小説。なんじゃそりゃ?ピンとこないなぁ。ユーモア家族小説のミステリ版ってことか?
それにしては、ずいぶんもってまわしたネーミングだ。そこには作者のたくらみが隠されているはず。
ううーん、いったいどういう話なんだろう?
それに加えて本書は第一回日本ミステリ大賞を受賞している。ということは、ミステリとしてもかなりの出来ということではないか。そしてそして、この1000枚以上という長さはどうだ。すごく期待値が高まるではないか。でも、この表紙はちょっと変だ?なんとなく『萌え』キャラっぽくないか?ていうか、そのものじゃないの?これがちょっと引っかかるなぁ。
以上のようなことを読む前に思った。手を出していいものかどうか躊躇した。ええい、ままよと読み出した。なるほど、こういうことか。おもしろい。おもしろすぎるぞ。新書版でもいいくらいの題材が、圧巻の書き込みで1000枚を越す大作になっている。小説としてのおもしろさはたいしたものだ。
本書のミステリは連続殺人。被害者に共通するものは何か?いわゆるミッシング・リンクものだ。
地方都市を舞台にマニアな人たちばかりが登場し、犯行声明も電波系の怪文書。そのままいけば、立派なオタク小説になりそうなのだが、それが、そうはならないから素晴らしい。このミステリ以外の部分がかなりおもしろいのだ。
倉知淳は本書がはじめてだったが、この人の文章はかなり好みだ。安心して読める。非常に読み難い「怪文書」でさえもあまりにもリアルな質感に驚くばかりだった。
だが、ミステリとしての出来はいただけない。はっきりいって真相はスカもいいとこだ。伏線は十二分に張られていたのだが、カタルシスはまったくなかった。これはちょっとキツいんじゃないの?
だが、それでも本書は好きだ。ミステリ部分を評価の対象にしなければ100点満点だといってもいい。
小説としての醍醐味は素晴らしいかったというわけだ。
他の作品も読んでみたいと思った。でも、そう思ってから4年経っている^^。