読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ギルバート ・アデア「ドリーマーズ」

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まず、驚いたのが『五月革命』である。恥ずかしながら、1968年にフランスでこんなに混乱を極めた革命があったなんてまったく知らなかった。学校で習ったっけ?とにかくその事実を知っただけでもめっけもん。

で、内容的には退廃とエロスに彩られた幕間劇みたいな感じで、腐臭を放ちながらも美しい。バタイユの「眼球譚」をもっとノーマルにして現代におきかえたみたいな感じ?

コクトーの「恐るべき子供たち」がモチーフとして使われているみたいだが、こちらは未読なのでなんとも言えない。未成年だけの管理者のいないユートピア。夢想の世界で繰り広げられる甘美なゲーム。

おっと、そうなるとマキューアン「セメント・ガーデン」ともダブってくるかな?近親相姦もしかりだし。でも、こちらは現実離れした美しさがちらついて、ストレートにそういった即物的なものが伝わってこないから、わりとあっさりした感じだ。手の届かない美しさに逆にほのかな憧れを感じる。

軽くてすぐ読めてしまうのだが、結構残るものがあった。