読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

真梨幸子「孤虫症」

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 まあ、なんとも変わった話だった。これほど展開が読めない本もめずらしい。しかし本書はちょっとでも筋を話してしまったらおもしろさが半減すると思われるので、未読の方がおられた場合を想定してあえてストーリーの紹介はせずに本書の感想のみで書いてみたいと思う。ご了承いただきたい。

 さて、本書はミステリなのである。だからもちろん謎があり解決のある話なのだ。そして、その謎の本質が本書のユニークなところなのだが、これは最後の最後になるまで本当にわからない。だが、それは逆にいえばラストの解決編が稚拙に早急であり、あまりにも駆け足すぎるということになるのだが、これが不思議と瑕疵になってないから、おもしろいのである。ただ、ミステリとしての完成度は60点くらい。この手法はもう何度も出尽くした感があるので、この評価だけは致し方ない。ミステリを読み慣れている人なら「ああ、またこのパターンか」と必ず思われるはず。第一章と第二章の語り手の変化は別にして、その記述の変化には誰もがすぐ気づくはずなのだ。だからこれは常套手段だなとわかってしまうのである。

 でも、真相はわかんないんだけどね^^。多分、これはわかる人はいないんじゃないかな?

 また、本書で描かれる数々の事柄は、人によってはかなり嫌悪感を催すものであり、よくぞここまでこれだけ気持ちの悪いものを並べたものだと感心してしまうのだが、それが具体的に何のことなのかは、やっぱり書かないでおこうと思う。ただ、タイトルを見てゾゾっと感じた人には、その感覚は間違ってないよとだけ言っておこう。しかも、これが本当に実在することだというのだから、二倍驚いてしまうではないか。なんとも気色の悪いことがあるのだなぁ、と心底ビビってしまう。

 とまあ、そんな具合にかなり変わった話でもあり、またグロとはちょっと違う気色の悪さに溢れた話でもある本書は、メフィスト賞受賞作の中ではかなり上位に位置するおもしろさをかね備えた本ではないかと思うのだが、どうだろうか?

 では、最語に未読の方に一つだけアドバイスを。

 『虫』が嫌いな方、特にニョロニョロ、クネクネがダメな方にはかなり辛い読書になると思われますのでそういう方は避けて通られたほうが賢明かと思われます。あと、18歳未満の方にはオススメできかねる描写にも溢れておりますのでご了承ください。気色悪くて汚い部分がかなり強烈に前面に出ております。

 それでも読みたいと思われる方は是非トライしてみてください。リーダビリティは保証いたします。