非常におもしろく読んだ。
すべての短編において、扱っている題材は『アメリカの悲劇』である。
しかし、暗くもないし不安にもならない。ブルームの筆勢は、過剰にならず適度なスピードで誘導してくれるから、こちらとしてはショッキングな展開でも自然に受け入れてしまっている。ほんとに、描かれている事柄は結構重たいのだけれど。
特に印象深いのは表題作がふくまれている「三つの短編」。三者三様それぞれ視点をかえてひとつの家族を語るという試みは、スポットライトが変わると映し出される部分が変わるように、鮮やかにひとつの家族の生きざまが浮かびあがってきて秀逸。家族的にというより、人間の業の深さを思いしらされた。
他の短編も、展開が一筋縄でいかないところが魅力的。淡々としているのに結構残る。締めくくり方も見事。フェードアウトでもなく、さらっとしてて余韻だけが胸に落ち着く。短い作品ばかりなのに、この充実感はどうだろう。家族の問題、性の問題、モラルの問題、精神の問題、様々な今のアメリカの腫瘍部分が露出され、尚且つそれを深刻ぶらずに語るブルームの手腕に舌を巻いてしまった。
なかなか得がたい作家である。