散文の集会にして総合的にはメタSFの体裁をとりながらも、おふざけとブラックなユーモアの散りばめられた戦争悲劇である。
主人公ビリー・ピルグリムのたどるトラルファマドール的時間転移旅行は、およそでたらめでありトラルファマドール的に解釈されなければならない。
描かれる断章には戦争の悲惨さがほのぼのとあらわれては消えてゆく。ビリーは個性がなく、読者の受ける印象はただの道化だろう。感情移入すらできない。
だがそれはビリーがトラルファマドール的時間転移旅行のもと、無意識のうちに達観した人生の真実なのである。
それはナンセンスであり、この物語自体がナンセンスなのだ。戦争そのものがナンセンスで、人生そのものがナンセンスなのである。そういうことなのだ。
ヴォネガットの語りは巧みで、ナンセンスな物語がそのまま文学になってしまっている。これは、見習わなければならない。そういうことなのだ。ピースV。