二編収録されている。表題作は、まさにタイトルそのものの話。主人公のヨシノは、旅行の申し込みをしてきたその日に友人から結婚式に招待されるのだが、二次会の幹事とスピーチを引き受けて欲しいという手紙を受け取る。しかも、式の日は、旅行の日程の最終日と重なっている。これが波乱の始まり。式当日、会社の上司の身内が亡くなったのでそちらも手伝わないといけないことになる。祝いと弔いに板挟みになって、自分を中心に世界が混乱していく様を見事にコントに仕上げた作者の手腕に拍手。ちょっと、コニー・ウィリスのシチュエーションコメディっぽい匂いもあって、大いに楽しめた。
もう一編の「冷たい十字路」は、群像劇で構成されている。朝の混雑する十字路で起こった自転車同士の衝突事故を通じて、それに関わる数名の視点で物語が語られてゆく。
しかし、こちらは少し散漫な印象を受ける。表題作がコメディなら、こちらはシリアスな話であり、不穏な雰囲気が底に漂っている。でも、軸を中心に巡っているにも関わらず座りが悪くて要領を得ない。
薄い本なのですぐ読めてしまうから、何かの待ち時間にオススメ。ぼくは、運転免許の切り替えの列に並んでいる間にほとんど読みました。