のだが、本書を刊行した当時(1997年)はジュブナイル専門の作家という認識しかなかった。
そんな彼女が一般向けに出した初の本ということで最初は気にもとめてなかったのだが、あの筒井康隆が
推薦してるということで読んだのである。
物語は、作家の北村がマンションに越してきたところから始まる。彼が越してきたマンションには四人家
族の幽霊たちが住んでいた。この奇妙な先住民たちと共同生活を送るようになった彼のもとにある女性フ
ァンから手紙が届く。この女性、北村の作品を自分への個人的なメッセージと思い込んでいるようなので
ある。そう、彼女は世にも恐ろしいストーカーだったのだ。幽霊とストーカーという二大恐怖に挟まれ
て、物語は衝撃のラストへと向かう・・・・。
でもやっぱり実際読むまではカバーの絵の感じや、まだまだジュブナイルっぽい雰囲気の本に、軽いコメ
ディタッチの本なんだろうくらいに思っていたら、あーた、もうびっくらこいてしまいましたよ。
書き出しは、いかにもって感じでコメディタッチのノリなのである。だが、読み進むにつれてだんだんと
サイコが幅をきかせてきて最後はまあ、ありきたりのオチだったけどなかなか凄いインパクトを与えてく
れた。家族の霊と『あの女』の関係が暴かれるところくらいから怖くなるのである。サイコさんのサイコ
っぽさも素晴らしい。背筋が凍るとはこのことだ。
家族の幽霊たちの一人『ひかる』がなかなか出てこないのもツボを得た配慮で、大変よろしい。
だが、やはりピカ一はサイコさんである。霊より人間のほうが怖かったというわけだ。
サイコさん特有のキチガイ論理もうまく構築されているし、最後に暴かれる主人公の封印されていた過去
の記憶も衝撃的だった。あなどれませんね、この人は。
と、本書を読んだ当時は手放しで喜んだのだが、うさぎさんその後こういった本は一冊も書いてないよう
だ。もっと読みたかったなあ。