読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

京極夏彦「厭な小説」

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これ分類が難しいなぁ。一応「国内ホラー」にしといたけど、ホラーかといえば、ちと弱い気もするんだよな。でも、ミステリって感じでもないしね。ま、これでいいか。

というわけで、いままで長い間読まずにきた京極作品なのである。ずっとずっと以前に「狂骨の夢」を読んでお腹一杯になっちゃって、もういいやと思ってしまったのだが、今回出たこの「厭な小説」、造本からして凄く凝ってて、なんだか期待がグングン高まってしまったので、とりあえず読んでみたのである。

で、感想なのだが、もう巻頭の「厭な子供」を読んだだけで、こりゃダメだと思ってしまった。だって、もっと生理的にとか、雰囲気的に最低な気分にさせてくれるのかと思っていたら、ただ単にビジュアルに訴えるだけの話だったからなんともしょぼい印象だったのだ。それでも我慢して次の「厭な老人」を読んでみたのだが、これもイマイチなんだな。こういう路線じゃなくて奥田 英朗の描く厭さみたいなのを期待したのがいけなかったのかな。「厭な扉」は以前に井上雅彦の主催する異形コレクション「グランドホテル」で読んでいたのだが、印象が薄かったみたいでまったく憶えてなかった。この「グランドホテル」ってのは異形コレクションの中でもなかなかおもしろかった印象があるんだけどなぁ。田中啓文の「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け」と斎藤肇の「シンデレラのチーズ」の二作品がかなりエグくて強く記憶に残っている。それはまあよしとして。あとの厭な話も同工異曲って感じで、そんな中でも「厭な彼女」がまだなんとか読めたかなという感じ。ラストの「厭な小説」で、すべてが集約される構成になってるが、これは技巧もなにもあったものでなく、ただ丸くおさめただけという感じだった。というわけで、この本、あまりおもしろくなかったわけなのである。一応最後までは読んだんだけどね。