読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ヒラリィ・ウォー「生まれながらの犠牲者」

 

生まれながらの犠牲者 (創元推理文庫)

ヒラリィ・ウォーといえばやはり「失踪当時の服装は」が大変有名なのだが、生憎それは読んだことがない。だから、本書を読むまではヒラリィ・ウォーとアンドリュー・ガーヴを混同してしまうくらい浅い認識しかなかった。ぼくはこの作家の混同というのをよくやってしまう。誰に迷惑かけたとか大恥かいたとかいうことはないが、自分の頭の中で整理する段階でこの混同をよくやってしまうのだ。

 例えば、ヘンリー・ジェイムズヘンリー・ミラージェイムズ・ジョイスを軽く混同しちゃったり、マーガレット・アトウッドとアンジェラ・カーターの作品がごっちゃになっちゃったり、最近ではマイケル・コナリーとクレイグ・ホールデンとをごっちゃにし、リチャード・ノース・パタースンとジェイムズ・リー・バーグの作品の分別があやふやになったりする。う~ん、困ったものだ。もともと人の名前を憶えるのが得意でないからこういうことになってしまうのだ。これは実生活でもよくあることで、半年くらい音信不通になってたりすると、すぐその人の名を忘れてしまうのである。えーっとこの人森さんだっけ?林さんだっけ?てな感じだ。

 話がそれてしまった。このまま続けていくと、どんどんボロが出そうなのでヒラリィ・ウォーに戻ろう。

 この作品、時代が時代なので捜査状況がすごくのんびりしている。それになんで警察署の署長が自ら捜査に赴いたりするんだろう?と最初とまどったりした。いくら田舎の警察だといっても、それはないでしょうって感じなのだが、60年代のアメリカではこれが普通だったんだろうと無理やり納得して読みすすめた。ほんとのんびりしてるのだ^^。

 しかし、描かれる内容は結構ハードだったりする。そりゃあ、人が一人消えちゃってるんだから深刻なのは当たり前なのだが、捜査のおおらかさに反して真相はかなり背筋の寒くなるものだった。

 タイトルの陰惨な印象がラストに至って、すごく強調されてくる。読んでる最中はなんとも辛気臭い話だと思っていたのだが、読み終わった時点で少し評価が変わった。この時代臭さを受け入れて気にしなければ、本書って結構いい作品なのだ。この本の真価は読み終わったときに発揮されるといっていい。タイトルのインパクトも相まって、とても余韻の残る本だった。

 読了して、ついつい思いを馳せてしまうのだ・・・・・・この娘の運命について。