ミステリとしてはダメダメなのだが、話としてはおもしろかった。
眼球を刳り貫く連続殺人鬼と標的にされた女教師。つかみはOKだ。非常にソソられる。やがて、その女教師の学校で猟奇殺人事件が起こる。巷を賑わす連続殺人と学校で起こる見立て殺人。
とても欲張りな内容ではないか。豪華二本立てというわけだ。
作者初のミステリだそうで、見立て殺人の方は章の終りに挿入される「ケンちゃんの日記」が叙述トリックなんだなとわかるが、そうかー、こうくるかー、という感じである。
以前読んだ「法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー」に収録されていた中西智明の「ひとりじゃ死ねない」を思い出した。でも、読み落としているのかもしれないが、本書はフェアじゃない。二段構えのミスディレクションは良かったが、肝心の部分が描かれてなかったように思う。
連続殺人鬼のほうは、ちょっと驚く展開になる。かなりブッ飛んでますねこの作者。
普通、ミステリにこういう設定は持ち込まないだろう。それをなんの衒いもなく使っちゃうところに驚いてしまった。
構成的には二つの事件の絡ませかたに難あり。バランスが悪すぎる。こういうのもアリなんだろうけどやっぱり少し違和感がある。居心地の悪いイスに座ってるような感じだった。
でも、先に書いたように話的にはなかなかおもしろかった。劇画調で展開される凄惨な物語として単純に楽しめたと思う。