読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ブライアン・アザレロ、リー・ベルメホ「 ジョーカー[新装版] 」

ジョーカー[新装版] (ShoPro Books)

 

 この表紙の禍々しさ。ゾゾ毛たちまくりだもんね。邪悪で、汚くて、オゾマシイ。それが一発で感じとれちゃう表紙でしょ?

 みなさん、ご存じジョーカーなのであります。バットマンに登場する最大の宿敵。犯罪界の道化王子との異名もあるこのサイコパスヴィランとしての魅力を最大限に引き出したのが、これまたご存じの「ダークナイト」で鬼気迫る演技を披露したヒース・レジャーだと、ぼくは勝手に思っているんだけどどうでしょう?

 あのジョーカーの一挙手一投足にどれだけ心臓を逆なでされたことか!もうやめて!それ以上ヒドイことしないでと、何度スクリーンに祈ったことか!

 それほどにヒース演じるジョーカーは衝撃的だった。ジャック・ニコルソンのジョーカーはまったく道化だったし、ホアキン・フェニックスのジョーカーは、脅威の存在ではなくて弱者としての悲哀をまとった胸が苦しくなる別物だった。

 だから、ぼくの中ではジョーカーといえば「ダークナイト」のヒース・ジョーカーなのである。

 で、ここでようやく本書の話になる。これ、発売された当初は結構いい値段してたから見合わせていたんだけど、何年か前にお手頃な新装版が出てたのを知って、読んでみたわけ。

 内容は、犯罪王ジョーカーがアーカムアサイラムから釈放されて、再びゴッサムシティを掌握する過程をジョーカーのもとで働くことになったチンピラ、ジョニー・フロストの目を通して描かれるというもの。

 まさか、ジョーカーが出所してくるとは思ってなかったマフィアのボスたちは、ジョーカーの縄張りを山分けして利益を得ていたのだが、それを次々と取り戻していくジョーカー。まさに、自分には不可能なことなどないと神の視点ですべてを自分のものにしていくジョーカー。道理や法などはないに等しい。はったりもないし、虚勢もない。個としての存在意義を極限まで昇華させたジョーカーは、後先など考えずに突き進む。

 非常に短い作品だから、すぐ読めちゃう。でも、情報量はかなりある。だから、何回も楽しめちゃう。

 この究極のサイコパスの所業を見て、ぼくはヒース・ジョーカーを思い出してしまった。ああ、もう一度彼の演じるジョーカーを見てみたかった。