このなんともとらえどころのない展開に翻弄される。すべて幻想譚だ。途中で様相が一変する。何を見せられているんだ?とまごついてしまう。
特に驚いたのが「太陽の側の島」。戦時中の話なんだなと思って読んでいると、目玉飛び出します。どこかの南国の島にいる夫との書簡でのやりとり。夫は、塹壕を作ったり、食料を自給自足で賄うため、畑を耕したりしている。いっこうに戦闘がはじまらない、なんとものんびりした日々を送っている。一方残された妻は小さい子を抱え、空襲の恐怖に耐えながら日々をすごしている。お互い相手のことを思いやり、また会う日を夢見ている。いったい、この話はどこへむかうのかと思っていると、いきなり・・・・・ああ、これ以上は書けない。
表題作の「オブジェクタム」にしても、話が奇妙に捻じれてゆく。答えが出てないから、いつまでも心に残る。「如何様」もそう。なにも終わらないし、なにも明かされない。それが真実として壁にピンでとめられてしまう。模様は変化し、暗いところが明るくなる。
この人は、SF畑の人なんだと勝手に思い込んでいたけど、芥川賞受賞してるんだね。円城塔みたいな?
本書を読んでみて、ぼくはすべてが幻想譚だと感じた。なんとなくしっくりこない。少し合わないなとも思った。他の本も読んでみなくてはわからないけど、なんか違うなと思ったのである。