読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

C・J・ボックス「神の獲物」

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 今回は驚いた。だって、キャトルミューティレーションですよ?あ、キャトルミューティレーションご存じ?主に牛なんだけど、屋外で飼われている家畜の全身の血液が抜き取られていたり、身体の一部がきれいに切り取られたりして死んでいる現象を指します。どうしてそういう死をむかえたのかが皆目わからないため、さまざまな憶測が飛びかい、主に地球の生物を調べている宇宙人の仕業じゃないかなんていわれているんだよね。

 で、今回はそのキャトルミューティレーションがジョー・ピケットの周りで起こっちゃうわけなのだ。え?オカルト?今回のお話はそっち方面なの?正直、戸惑うよね。いままであんなに熱い男の物語だったのに、オカルトって・・・。それに今回は500ページを超えるなかなか長い作品なのだ。もう、期待と不安が入り混じっちゃって、大変だ。ジョー本人もオカルト的な話が大嫌いで、これっぽっちも信じていないっていうし、いったいどういう風に決着がつくのかもうハラハラ。

 さて、そこで物語がどう動いてゆくのかは、もちろんここでは書かない。それを書いちゃあ興醒めしちゃうでしょ。ぼくは今回も満足してページを閉じた。それだけ書いておこう。いつものように、憤怒のカタルシスはなかったのだが、それでもミステリとしてのおもしろさはいつもより強調されていたと思う。いろんな意味で怖い結末だった。

 相変わらずジョーは、善の象徴として傷つきながらも誇り高く物語を牽引してゆく。ほんと、惚れ惚れしてしまうよね。ぼくの基準からすれば、ちょっと堅物なきらいはあるけど、でも、どこへ出しても恥ずかしくない理想の人間であり父親だ。シェリダンもルーシーも彼を父親にもって、ほんと幸せな子どもたちだ。もちろん愛すべき賢妻であるメアリーベスもね。彼ら夫婦のさまざまな問題に対する取り組み方にはほんと頭が下がる。お互い隠し事をせず、仕事のことでもすべて相談しあう態度に好感がもてる。実際のとこ、なかなかそういう夫婦はいないんだけどね。

 さて、ジョー・ピケットのこのシリーズまだまだ続くのであります。これからも続けてどんどん読んでいきますよ。