アートブックなのである。だから、一瞬で読めてしまうから、値段に見合う満足感があるかといえば、ない。しかし、これは前代未聞の新しい試みなのだ。いや、ぼく個人の勝手な思い込みであって、すでに先行作があるのかもしれないが、それはこの際無視しよう。
説明いたしますと、著者である竹本氏は、いろはだけでひとつながりの物語を構成できないかと試みたわけなのである。冒頭の文字がすべて異なる仮名の四十八首で構築しようというのだ。それもミステリとして機能する殺人が起こり、探偵が登場し、解決に導かれるというものを。これってなかなか凄い試みでしょ?
で、それを本当にやっちゃうんだから凄いよね。ちゃんと四十八首でおさまってるもの。でも、さすがにミステリとしての完成度は満たされない。でも、それは言っちゃあいけない。言っちゃったけど。
これ、文庫化されるのかな?そう思ったので、矢も盾もたまらず購入しちゃいました。本好きでコレクターの性なのであります。因みに、この造本、ページが全て外れる作りだそうで、自分の気に入ったページを表紙に差し替え可能なのだそうだ。そんなことしませんけどね。
とにかく、本書は試みとしての奇抜さが群を抜いている、まさに奇書なのであります。ミステリ好き、竹本好き、変なモノ好き(←ぼくはこれね)は、一読の価値ありの本なのであります。