読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

貴志祐介「新世界より(上下)」

ようやくこの大作を読了した。読み始めるまでが長かっただけで、読み出したら、あっという間だった。 久しぶりの貴志作品、世評も高くブログ仲間さんの評価も良かったので、おもしろいのは間違いないとわかっていたが、読み終えてみれば最初勝手に想像してい…

アンドレア・M・シェンケル「凍える森」

1950年代半ば、ドイツのバイエルン地方の南で一家惨殺事件が起きた。殺されたのは6人。農場主であるダナーとその妻。彼らの娘であるバルバラ。バルバラの幼い子であるマリアンネとヨゼフ。そして殺された日にこの家にやってきたなんとも不運な使用人の…

サマー・ブリーズ

サマー・ブリーズは音の矢。鼓膜を突きぬけ、脳に突き刺さる。 ぼくは水パイプから得体の知れない煙を吸いながら、隣に侍らせたとびきりの美女の胸を弄んでいる。 気持ちはとてもハイ。こんなに素敵な気分になったことはない。 いきなり冷たい爪が手の甲に食…

ジェイムズ・グレイディ「狂犬は眠らない」

これ、本選びの嗅覚のみによって買ったんだけど、なかなか良かった。あらすじは非常にシンプル。5人の登場人物がいるのだが、これがみなCIAの諜報員で、過去に任務でひどい目にあわされて、いまは政府が管理するシークレットな精神病院に収容されている…

百怪の会編「恐怖のネット怪談」

実話系ホラーに目覚めたので、読んでみた。本書はネットの怪談系サイト「妖怪百物語」「Ghost Tail」「きょうふの味噌汁」の三つのサイトから許可を得て編纂されたそうで、それぞれのサイトから選りすぐりの怪談が集められている。ということなのだが、正直…

小池真理子「律子慕情」

小池真理子といえば、もう十年以上前にジャパン・ホラーの傑作だときいて「墓地を見おろす家」という本を読んだのだが、これがまったくもってしょうもない本で、いったいこれのどこがおもしろいんだと頭を傾げたことがあった。それ以来この人の本は読むこと…

東郷隆「人造記」

この人の本は初めて読むのだが、いっぺんで気に入ってしまった。 収録されているのは以下の5作品。 「水阿弥陀仏」 「上海魚水石」 「放屁権介」 「蟻通し」 「人造記」 それぞれ時代はバラバラだ。「水阿弥陀仏」は室町時代が舞台。かの果心居士を彷彿とさ…

ガブリエル・ヴィットコップ「ネクロフィリア」

やはりフランスには怪物が多いのである。サド、バタイユ、ジュネ、セリーヌ、マンディアルグの系譜に連なる新たなる暗黒文学の精華が本書「ネクロフィリア」なのである。 ここで、忠告。以下、本書に関するぼくなりの感想を書いていきますが、扱っている題材…

木原浩勝 中山市朗「新耳袋 現代百物語第四話」、小池壮彦「幽霊物件案内2」

もねさんの紹介で読んでみることにした。こういう実話系怪談の本をまとめて読んだことがなかったのでなかなか新鮮な体験だった。 まず、「幽霊物件案内2」である。これはさほど怖くない。もねさんが取り上げられていた第九章の封印されたホテル旧館に纏わる…

弐藤水流「リビドヲ」

ちょっと写真うつりが悪いけど、帯の文句はわかると思う。この面子が絶賛してるとなると、ちょっと期待してしまうのは仕方がないことだろう。新人なのに、この鳴物入りのデビューはいったいどうしたことだ?それに、週間現代では貴志祐介も書評に取り上げて…

古本購入記 2009年7月度

ようやく梅雨もあけたようで、いよいよ夏本番ですね。でも、今年の夏はあんまり暑くないような気がす るんだけど、そうでもない?ウチのマンションまだ一度もクーラーつけたことないんだけど、みなさんど うですか?4階で川が近くにあるからかな?夜なんか…

「悪魔のような夕方」

悪魔のような夕方だった。 ぼくは大きな饅頭をほおばりながら、堤防の道を太陽に向かって歩いていた。 見下ろすと緩やかに流れる金色の川がまぶしくて、一瞬目が眩んだ。ふたたび焦点が合うと、ぼくはマイ キート・ハスパーンの探偵事務所にいた。ハスパーン…

小川洋子編著「小川洋子の偏愛短篇箱」

恥ずかしながら、小川洋子の本は一冊も読んだことがない。なぜだか読みそびれたまま、いままできてしまった。「ホテル・アイリス」「まぶた」「薬指の標本」などを買ってあるのだが、読めてないのだ。 にもかかわらず、こんな本を読んでしまった。なぜなら、…

絵本・新編グリム童話選」

いまさらなのだが、グリムなのである。どうしてこの本を読む気になったのかは説明しなくてもわかるでしょ?だって、表紙の写真見てもらえれば一目瞭然なんだもの^^。 というわけで本書には11編の作品が収録されている。「ブレーメンの音楽隊」 高村薫「…