読書の愉楽

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ジェイムズ・グレイディ「狂犬は眠らない」

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 これ、本選びの嗅覚のみによって買ったんだけど、なかなか良かった。あらすじは非常にシンプル。5人の登場人物がいるのだが、これがみなCIAの諜報員で、過去に任務でひどい目にあわされて、いまは政府が管理するシークレットな精神病院に収容されているのだ。で、そんな彼らの主治医である精神科医が何者かによって殺されてしまったから、さあ大変。濡れ衣をきせられては大変と5人は施設を脱走し、真犯人を追い求めて旅をするのである。

 基本のあらすじはこんな感じだ。そこで物語に色をつけてくるのが気の狂った5人のスパイたち。みなそれぞれ一癖も二癖もあるのだが、もともとは優秀なスパイだったのでネジが飛んでても、とてもカッコいい。だが、精神を病んでいるのは間違いなく、薬が切れた彼らがなんとか行動できるのは一週間なのである。タイムリミットも加わって、物語はオフビートに突き進んでいくのだが、そこに挿入される彼らの過去の任務の話が結構酷い話なのだ。そりゃ、精神に異常きたすわなと思える話ばかりで、ここはかなりヘヴィに受け止めてしまう。でも、現在パートの彼らの活躍は、浮き沈みもあるが基本陽気なグルーヴが流れてて、とても楽しい。ミステリとしては、意外な犯人というほどでもなかったが、別の意味でサプライズがあるのがおもしろい。どのキャラも際立ってて素晴らしいのだが、ぼくがシビれたのは命令されると、どんなことでも従ってしまうエリックが最高だった。彼の活躍は素晴らしく、その特性を活かしたユーモラスな描写もとても良かった。

 ラストでは5人のうちの誰かが死ぬことになる。これだけ魅力的で素晴らしい彼らと死の別れをするのは心痛い限りなのだが、これは必然の結末だったんだなぁと思うのである。これがこの物語の一番しっくりくる終わり方なのだ。

 660ページ強と、文庫本としてもとても分厚い本だが、読みだしたらやめられないおもしろさに満ちている。ぼくはこういうミステリが大好きなのだ。