の登場人物がいるのだが、これがみなCIAの諜報員で、過去に任務でひどい目にあわされて、いまは政
府が管理するシークレットな精神病院に収容されているのだ。で、そんな彼らの主治医である精神科医が
何者かによって殺されてしまったから、さあ大変。濡れ衣をきせられては大変と5人は施設を脱走し、真
犯人を追い求めて旅をするのである。
基本のあらすじはこんな感じだ。そこで物語に色をつけてくるのが気の狂った5人のスパイたち。みなそ
れぞれ一癖も二癖もあるのだが、もともとは優秀なスパイだったのでネジが飛んでても、とてもカッコい
い。だが、精神を病んでいるのは間違いなく、薬が切れた彼らがなんとか行動できるのは一週間なのであ
る。タイムリミットも加わって、物語はオフビートに突き進んでいくのだが、そこに挿入される彼らの過
去の任務の話が結構酷い話なのだ。そりゃ、精神に異常きたすわなと思える話ばかりで、ここはかなりヘ
ヴィに受け止めてしまう。でも、現在パートの彼らの活躍は、浮き沈みもあるが基本陽気なグルーヴが流
れてて、とても楽しい。ミステリとしては、意外な犯人というほどでもなかったが、別の意味でサプライ
ズがあるのがおもしろい。どのキャラも際立ってて素晴らしいのだが、ぼくがシビれたのは命令される
と、どんなことでも従ってしまうエリックが最高だった。彼の活躍は素晴らしく、その特性を活かしたユ
ーモラスな描写もとても良かった。
ラストでは5人のうちの誰かが死ぬことになる。これだけ魅力的で素晴らしい彼らと死の別れをするのは
心痛い限りなのだが、これは必然の結末だったんだなぁと思うのである。これがこの物語の一番しっくり
くる終わり方なのだ。
660ページ強と、文庫本としてもとても分厚い本だが、読みだしたらやめられないおもしろさに満ちて
いる。ぼくはこういうミステリが大好きなのだ。