読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ジョー・R・ランズデール「サンセット・ヒート」

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 ランズデールの素晴らしさを得々と説いていたにも関わらず、彼の長編を一作も読んでなかったのだが、今回ようやく読んでみた。とりあえずなぜかわからないが2004年に刊行されているのにまだ文庫になっていなかったので本書を読んでみた。

 舞台は1930年代のテキサス。いきなりカエルや魚が降りそそぐ嵐の場面で幕をあける。そんな大嵐の中、主人公であるサンセットが夫から暴行をうけ、彼を射殺する。紆余曲折があり、彼女は夫の後を継ぎ町の治安官に就任、慣れないながらも男たちの反感の目の中なんとか職務を全うしようとする。そんなある日、夫の業務日誌をみていた彼女は黒人の畑から甕に入った赤ん坊の死体が見つかったという事件を見つける。興味を持った彼女はその事件を調べるが、そんな矢先その同じ畑から腹部を切り裂かれた女性の死体が発見される。どちらの死体もまるで糖蜜を塗ったかのように黒い液体でコーティングされており、不思議なことに女性のほうは垂直に立った状態で埋められていた。いったい、この二人に何が起こったのか?事件を探る彼女と仲間たちの前に邪悪な巨悪がたちはだかる。

 もうとにかく読んでいて、うれしくなってしまうのだ。何が?う~ん、それがうまく説明できない。ストーリーを夢中で追うおもしろさに加えてこの世界を構築した作者に常に拍手しているって感じだろうか。

 よくぞ、こんなおもしろい話を書いてくれた。ぼくが読みたいたかったのは、こういう話だったんだ。どうもありがとう!サンキュー、サンキュー、ベリーベリーマッチって感じ?

 まだ混乱に満ちて、すべてが確立されておらず何もかもが自由だった時代を舞台に、秩序と道徳をもたらそうとする者と、それを阻止しようとする者の戦いが描かれるのだが、それがランズデールの手にかかると、どうしてこうも猥雑で下品で突飛な話になってしまうのだろうと思ってしまう。

 とにかく何でもありなのだ。次に何が起こるかまったく予測不可能。そして、その驚きが常に次の場面への起爆剤となって、どんどんページを繰らされてしまう。上記のあらすじは本当のアウトラインであって本書にはそれにくわえて、恋も駆引きも裏切りもイナゴもミステリもユーモアもヌママムシも描かれる。

 おっと、変なのが二つほど入ってたかも知れないが、それは気にしないでいただきたい。だって、それは本当のことなのだ。それにミステリとしてのサプライズはなかなかのものだしね。

 とにかく、これで確信した。ランズデール大好き!ぼくは彼の本をすべて読みつくす。たった今、そう決めてしまいました^^。