読書の愉楽

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ジョー・R・ランズデール「ババ・ホ・テップ  現代短篇の名手たち 4」

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 ランズデールといえば、ぼくの中ではずっと前から短篇の名手だった。彼の作品をはじめて読んだのは新潮文庫から出ていたホラー・アンソロジー「ナイトソウルズ」に収録されていた「大きな岩のある海辺で」だった。キャンプに来ていた家族を襲う未曾有の怪異を描いた非常に短い作品なのだが、なかなかのインパクトを与えてくれて印象的だった。次に読んだのが創元文庫から出たゾンビアンソロジー「死霊たちの宴」に収録されていた「キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯るの記」。こちらも下品で猥雑な物語で、充分堪能させてもらった。そして極めつけがこれまた創元から刊行された重量級のアンソロジー「999」に収録されていた「狂犬の夏」。これは確か長編「ボトムズ」の元になった作品だと思うのだが、シリアルキラーと少年の成長を重ね合わせた郷愁さそう佳作で、この一作を読めただけでもこの分厚いアンソロジーを買った甲斐があったなぁと思ったほどだった。

 そんなランズデールの短編集が出たとあれば、読まずにはおられないではないか。本書には12の作品が収録されている。収録作は以下のとおり。

 「親心」

 「デス・バイ・チリ」

 「ヴェイルの訪問」

 「ステッピン・アウト、一九六八年の夏」

 「草刈り機を持つ男」

 「ハーレクィン・ロマンスに挟まっていたヌード・ピンナップ」

 「審判の日」

 「恐竜ボブのディズニーランドめぐり」

 「案山子」

 「ゴジラの十二段階矯正プログラム」

 「ババ・ホ・テップ」(プレスリーVSミイラ男)

 「オリータ、思い出のかけら」

 特に気に入った作品に言及すると「親心」は非常に短い作品ながら、ミステリ的なオチがあっておもしろい。そうきたか!という感じ。「デス・バイ・チリ」と「ヴェイルの訪問」は「罪深き誘惑のマンボ」でブレイクしたハップ&レナードシリーズの短篇作品。この長編シリーズも読まねばと思いながら、いままで読まずにきたが当然のごとく本はすべて揃えてあります。展開の妙に狂喜乱舞したのが「ステッピン・アウト~」。やりたい盛りの悪ガキ三人組が体験する一夜を描いた作品なのだが、この展開は誰にも予測できないだろう。とにかく読んで驚けとしか言えません。「草刈り機を持つ男」も奇妙なシチュエーションから悪夢になだれこむ展開が大いに笑える一作。「ハーレクィン~」はつい先日読んだキングの「ジンジャーブレット・ガール」のような連続殺人鬼を描いたエンターテイメント作品で、誰もが読み始めたらおそらく最後までノンストップとなること間違いなしだろう。「審判の日」は1900年に実際に起こったハリケーンの災害を描いた中編で、ドキュメント風に時間をおう構成も良いが、これまた実在したという黒人ボクサーを絡めることによってただのディザスター物に徹してないところがおもしろかった。

 表題作の「ババ・ホ・テップ」は副題のとおりのお話。老いたプレスリーと黒人のケネディ元大統領が蘇ったミイラ男と対決するのだが、おわかりのとおりバカバカしい設定なのに、読んでいくうちに登場人物に引きづられるように感情移入している自分に驚いてしまう。ランズデール恐るべしである。

 というわけで、久しぶりにとても満足のいく短編集を読んだ。やはりランズデールの短篇は最高だ。ミステリ好き、ホラー好き、そしてSF好きまで、さまざまなジャンルを飛び越えてオススメできる短篇集だといえるだろう。