この人の本、本質ついてて好きなんだけど、これはイマイチだった。長編(実質中編くらいの長さだけど)を読むのが初めてだったが、期待してたほどではなかった。「完璧じゃない、あたしたち」や「どうせカラダが目当てでしょ」を読んで、おおいに共感し、なおかつ目ん玉ひん剥かれてしまった経験から、本書もなかなか凄い読後感を与えてくれるのだろうとハードルをあげてしまったのかもしれない。
ちょっと薄い本だなとは思っていたのである。200ページそこそこだからね。薄いから内容が悪いなんて決して思っていないが、読み始めてすぐに、この感じだとやはり薄すぎないかと危惧したのである。物語は、ボコボコにされた女性がヤクザに拉致されて、親分の屋敷に連れてこられるところから始まる。この女性ちょっと特殊な生い立ちで、身体も大きく筋肉バキバキ、暴力をこよなく愛する喧嘩マシーンで、そこを見込まれて連れてこられたワケ。なんやかんやで、結局その喧嘩マシーンが親分さんの一人娘のボディガードになるのだが、ここに集う人達にはいろんなしがらみがあって、そこへ投げ込まれた喧嘩マシーンによって化学反応が起こって、運命が大きく動き出すことになる。
ちょっとね、性急なんだよね。人間関係の序列があって、それぞれの思惑が絡んで、過去を引きずっている者、野心に燃える者、享楽を心から愛でる者、がんじがらめの者、頭より身体が先に動いちゃう者なんかが干渉しあって結末に雪崩れこむのだが、そこに積み重ねの重みがないのである。ストーリーがどんどん先へ先へと進んでしまうので、そこらへんが2時間サスペンスみたいな印象になってしまう。ラスト近くうわ!ってなるところは良かった。まさか、こんなことになっているとはおもわなかった。
だがしかし、いや、だからこそこの軽さはちょっと残念だった。喧嘩マシーン新道依子と親分の娘尚子との関係、物語自体の進行、後半の成り立ちも無理があるし、結局ストンと落ち着かない。次に期待したい。