読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

呉勝浩「雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール」

 

雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール (光文社文庫)

 変わった話なのである。かなりね。開巻早々、猟銃乱射事件の記事が目に飛び込んでくる。死人が出てるし、無差別殺人かなんかなの?と思いながら、この事件を頂点に物語が語られるんだろうなと予測する。

 しかし、しかしだ。話はいきなりシフトするのである。団地の屋上から投げ捨てられる女の子。もちろんタイトルになっている雛口依子じゃないよ。しかし、依子は依子でバイクで田んぼ道を走行中に車に激突して吹っ飛んでしまうのである。そして、アスファルトに地獄のキスをしようという瞬間に物語は過去に遡る。

 そこから先は………そこから先は、家族の話になる。でも、それはもちろん普通じゃない家族。軽くて明るいのに暴力のキナ臭さがつきまとい我が身は、血と硝煙に包まれてゆく。
 
 そして、現在パートにおいてなんとなく笑えるバディ物として、ていうか依子なかなかのユーモアセンスじゃん!とおもろく読んでいたら、こちらも血と硝煙に突き進んでいくのであった!

 ま、始まりが猟銃乱射事件の記事だから、これはいたしかたないワケでありまして。
 
 でも、久しぶりに夢中になっちゃった。話がどこへ転がるのかまったく見当つかないから、おもしろいよね。それに巻末には、毒母メンヘラ娘の切り抜き小説が袋とじでついてるし、カバーの裏には、手書きの涙なくして読めない毒母メンヘラ娘の女の子による創作小説が手書き文字で印刷されてるしで、もうほんとに大満足の一冊なのでありました。

あ、この文章読んでなんのこっちゃ?と思われた方、ぜひぜひ本書をお読みください。ほんとキャノンボールなんだから!!