短いから遅読のぼくでもすぐ読めてしまった。本屋でも、先の三部作の印象があるので五、六百ページくらいの本を探していたから、本書の目の前をスルーしちゃって見つけられなかったしね。
ま、とにかく本書を読めたことをうれしく思う。なんせこのミステリ、薄いからってぜんぜん物足りなくないんだもの。なかなかドキドキしましたよ。
話としては、かの三部作の前日譚として描かれる。自由研究の題材を何にしようかと頭を悩ますピップのもとにある招待状が届く。友人であるコナーの家で、殺人事件の犯人当てゲームを開催するというのである。ピップたちはそのゲーム世界の登場人物として参加し、その人物になりきってゲーム世界を体験しながら謎解きをしていくという。
これね、いったいどういうことなんだと思ったのだが、参加型ゲームというのはわかるけどボードゲームとかと勝手が違うから、どうやって興趣を盛り上げてゲームとして成立させるんだろう?と思っていたわけ。参加者は何も知らずにやってくるのに、登場人物を演じなくてはならないとは、これいかに?ピップ自身もテスト期間が終わって、やれやれと思う時期なのだが次に控える自由研究に備えて、こんなくだらないゲームに参加している場合じゃないのになんてのり気の出ないまま仕方なく参加するのだが、本来の探求心が発動してやがてゲームに没頭することになる。
これは『KILL JOY』というゲームを元にしてコナーの兄であるジェイミーが企画したものらしいのだが、その進行に沿って物語が進められてゆく。各人に渡されるブックレット。そこには各人各様の背景と、ページをめくるごとにこうしなさい、ああしなさい、こう言いなさい、このワードをセリフに入れて発言しなさいというような指示が書かれている。それの通りに進行するだけならさほど盛り上がることはないかなと思うのだが、ここでは犯人が誰なのかが一切明かされていないのだ。だから、犯人役である人物が自分達の中にいるのだけれど、誰なのかわからない。もしかしたら、自分が犯人なのかもしれないという暗中模索の中でゲームが進行するのである。
さて、真相はいかに?もちろん、本作は単独でも十分鑑賞にたえうる話なのだが、先の三部作を読んでいるといろいろ伏線的な場面もあってさらに楽しめる内容となっている。ピップがまだあの衝撃の事件を体験する前の出来事として、読者としても感慨深いものがこみあげてくるのであります。