読書の愉楽

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我らの山田風太郎  古今無双の天才

我らの山田風太郎: 古今無双の天才 (文藝別冊)

 ああ山田風太郎。ぼくはこの名を見ると、心を掴まれてしまう。彼が亡くなって、もう二十年にもなるというのに!

 山田風太郎はぼくの小説体験の原風景だ。彼の作品なくして今のぼくはいないのである。何度も繰り返し書いているので、風太郎作品との出会いはここでは語らない。とにかく、今でもぼくの根幹には山田風太郎がでん!と鎮座ましましているのである。

 そんな風太郎のムック本が本書なのである。ぼくだけでなく山田風太郎をこよなく愛する作家は枚挙にいとまがない。ていうか、ほとんどの作家が影響を受けているんじゃないの?

 本書では月村了衛と今村翔吾の対談にはじまり、いろんな作家の風太郎マイベスト、皆川博子のエッセイ、縄田一男奥泉光新保博久その他による評論、風太郎自身のベストエッセイ集、風太郎夫人の山田風太郎の臨終までなんていう手記、 風太郎青年の「小説腹案集」などが収録されている。

 もうねえ、山田風太郎にどっぷりつかるっていうことだけで満足しちゃうのだ。彼が天才なのは、百も承知。どんな偉い人や、人気の作家たちがその魅力を語り尽くしても、ぼくにしてみればもうわかっちゃっていることなのだ。独創的な初期のミステリ群、一世を風靡し、何度もブームを巻き起こしている忍法帖、有名人物を巧みに配し、思わぬ邂逅やめぐりあわせの妙で読む者を驚かせた明治物、晩年に精力的に取り組んでいた室町物(これも傑作多し!)。そりゃあ、駄作もあるけど傑作のほうがはるかに多いから、そんなの霞んで見えないのだ。

 とにかく山田風太郎は小説の天才、っていうか小説の神様に心底愛された作家なのであります。そうでなくっちゃ、こんなにおもしろい小説をこんなに数多く書くことなんてできないでしょ。

 もう新作は読めないし、忍法帖は短篇集二冊残してすべて読んじゃったけど、まだまだ未読の本は数多い。ぼくはこれからも彼の本と人生を歩んでいくのであります。

 あ、そうそう、ぼくは同じ本を読み返すことがないんだけど、風太郎の本だけは読み返したことがある。「伊賀忍法帖」と「魔界転生」ね。二回目もすこぶる興奮して読了したのを覚えている。
やはり偉大なり、風太郎なのだ。