読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

小野不由美「ゴーストハント 3 乙女ノ祈リ」

ゴーストハント3 乙女ノ祈リ (角川文庫)

 今回は、とある女子校に頻出する怪異を解決するため、われらがSPR(渋谷サイキックリサーチ)の面々が活躍する。狐狗狸さんが引き起こした狐憑きにはじまり、不審な物音、ポルターガイスト、果ては生徒が傷つけられる実害まで出る始末。
 
 だが、調査を開始してもなかなか原因が特定できず、焦る面々。いつもはクールで頼もしいナルも手探り状態から抜け出せない様子。しかし、時間を追うごとに少しづつ物事の複雑な様相が解きほぐされてゆく。昔から受け継がれている旧怪談、新たに浮上する新怪談、そして雰囲気に呑まれてそう思い込んでしまう枯尾花的解釈。様々なアプローチを試み怪異の原因を探るのだが、そこに新たに超能力騒ぎまで加わって話はややこしくなってゆく。

 というわけで、シリーズ第三巻なのであります。ここまでくると、もう主要メンバーとは昵懇となっているわけで、やあ、久しぶりまた会ったねって感じで物語に入ってゆけるところがうれしい。しかし、回を追うごとに少しづつ明かされる事実もあるわけで、今回はナルと麻衣の新たな一面にスポットが当てられる。

 話自体は先ほども書いたが、現象が頻出するけどそこに統一性がないため、各人戸惑いを隠せない。それは読み手も同じことで、じりじりと結果を引き延ばされて身悶える。ラストには帰納法に基づく推理が開陳されるが、これは少し弱かった。

 話自体もさほど怖くなかったが、シリーズとしての強みは確実に増しているので、続けて読んでいこうと思える楽しさがある。さて、次はどんな物件に直面するんだろう?