読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

芦花公園「ほねがらみ」

 

ほねがらみ (幻冬舎文庫)

 作者のことはよく知らなかったのだが、本屋で見かけて面白そうと手にとった。
  
 ドキュメント的な「残穢」みたいな展開と怖さを求めていたのだが、ちょっと違った。でも、つくりはそういう感じなのだ。怪談を集めるのが趣味という医師が主人公で、その彼の元に集まってくるさまざまな怪談が呼応しあい、少しづつ繋がりを見せ、一つの真実に結実していくという構成。

 まさに「残穢」がそうだったでしょ?始まりは一人の女性の心霊体験で、それを調べていくうちに違うアプローチからも道が繋がり大いなる因縁の真相に辿りつく。しかし、「残穢」は、その道筋が分岐していたにも関わらず、そこに辿りつこうとする強い意志があり、そこに至る謎解きにも似た興趣があった(しかし詳細に語るがゆえまどろっこしい部分もあり、歯がゆくて怖さは半減したけど)のだが、本書は各章それぞれにさまざまな怪談エピソードが挟まれ、そこは作者の目指したところであり、一見繋がりがわからないそれぞれの話が、調べてゆくにつれて関連を持ちはじめ、大きな背景が浮かび上がってゆくという構成なのだが、いかんせんそれぞれの話が多すぎて、強い印象として残らず、伏字なんかの演出もあって(これの意味がわかるところはおもしろかったのだが)統一されてゆく過程の盛り上がりが感じられなかったのだ。

 民俗学的な考証や、伝承、伝説に基づく意味の解釈などは知らないことも多く、すごく面白く読んだ。参考文献をみれば予想つくから、ここで書いてもいいと思うけど、それ以上のことは敢えて書かないが、他にもいろいろあってどれもこれも興味深いものばかりで楽しめた。

 でも、怖いかといえば、怖くはない。不気味ではあるけど。

 これは個人差があるのだろうけど、ぼくは因縁がひもとかれる過程に怖さを感じ、その真相の衝撃に震えるのである。いままでで一番怖かったのは「リング」だった。

 しかし、この作家さんは基盤がしっかりしている印象なので、今後の作品に期待したいと思う。ていうか「異端の祝祭」を本書を買う以前に買ってあるんだよね。