読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

C・J・ボックス「フリーファイア」

 

フリーファイア (講談社文庫)

フリーファイア (講談社文庫)

 

 

 

 

 安定のシリーズでございます。馴染みの登場人物たち、ブレないジョーの信念、毎回新たな切り口を見せるストーリーとどこをとってもおもしろ要素満載なのである。

 今回は、イエローストーン国立公園内での事件を扱っている。さすがに名前は知ってるけど、行ったこともないし、どんなところなのかってまったく知らなかったイエローストーン。みなさん、そんなぼくみたいな無知な人間でも本書を読めば、そこそこ行った気になっちゃうんですよ。それくらいここにドップリはまっちゃうんだな、これが。

 イエローストーン記念公園はそのスケールからして桁違い。アイダホ、モンタナ、ワイオミングの三州にまたがる9000平方キロメートルの大自然公園。日本でいうと鹿児島よりちょっと小さくて広島よりちょっと大きいくらい?どんだけなんだよ!だから、州がまたがるこの地域では事件が起こっても法の抜け穴によって陪審員が選出できない『死のゾーン』という特殊な場所があって、そこで起こった事件は裁判が成立しないから罪に問えないというなんとも矛盾した事が起こってしまう。だから四人の若者を射殺したクレイ・マッキャンという弁護士は人を殺していながらも、釈放されてしまうのである。えー!!でしょ?事実本書が書かれたあと、この『死のゾーン』の抜け穴をなくす法律を作るために上院議員が動きだしたそうだ。

 前回の事件で猟区管理官をクビになっていたジョ―は、ワイオミング州知事に呼び出され職務復帰を条件にこの事件を捜査するこになる。物語のとっかかりはこんな感じ。

 とにかくイエローストーン国立公園が素晴らしい。世界最大の間欠泉があるこの火山地帯は、驚きと発見の宝庫で、ま、この事件もそれが元で起きてるんだけどね。この一帯は60万年に一回大噴火を起していて、いまが丁度その時期でありいつ噴火が起こってもおかしくないなんて話も出てくる。もしこの大噴火が起これば、吹きあがった火山灰で1000キロメートル以内の90%の人が死に、地球の平均気温は最大10度下がり、その寒冷気候は6年から10年間続くなんて推測されているのだ。

 それ絡みで、ショッキングな死の場面が出てきたり(長年読書してるけど、こんな場面は見たことないよ、ホント)、奇妙な現象があったり、いやあ本当に一回行ってみたいよね。

 あと、いままで軽くしか触れられなかったジョ―の家族と過去の話が明らかになることも言及しておきたい。ジョ―の全体像がこの鮮明になったバックグラウンドによってより強調されたとぼくは思う。

 このシリーズ少しづつ読みすすめようなんて言ってたのだが、だめだ、本書を読了して続きが気になって仕方がない。続けて次の「復讐のトレイル」を読んでいる。だって、ああた、あの人があんなことになって、どうなるのかって安否が知りたいじゃないの!で、読みはじめたら、いきなり過去に登場したあの女が再登場して、わあ、こいつまた出てきた!ってなってる。

 ほんとクソおもろいなこのシリーズ。