作家 吉村昭が癌を発病し、息をひきとるまでを妻の視点で描いた作品。舌に痛みを感じたのがはじま
りだった。舌癌を発病したのである。身内を多く癌で亡くしていた吉村氏は自身の健康にも気をつかい、
とりわけ癌には気をつけていた。しかしその甲斐もなく癌に侵されたのである。それから苦痛をともなう
闘病がはじまる。読者は発症にはじまる物語が死で完結することを知っている。行きつく先は死しかない
本書を小説として隔離した状態で身の上を語っているのである。そうしなければこの壮絶な闘病記を書く
ことができなかったのだろうと察せられる。本書を読んでいると、できるかぎり感情を廃して事実のみを
記述することに専念しようという意識が感じられるし、事実本書の筆勢はとても簡素で冷徹な印象をうけ
る。しかしそれでも時折感情が噴出するところがあり、それがとてもせつなく哀しいのである。
吉村氏は自身の生き方を貫いた人である。最期の場面の描写は衝撃的だ。まさかそんな死に方を選ばれ
吉村氏は自身の生き方を貫いた人である。最期の場面の描写は衝撃的だ。まさかそんな死に方を選ばれ
ていたなんて。作品を通しても死をみつめ続けていた氏の最期はあまりにも壮絶だった。
短絡的で自分でもあきれてしまうのだが、本書を読んで吉村氏の本を読みたくなった。近々何か読むつ
短絡的で自分でもあきれてしまうのだが、本書を読んで吉村氏の本を読みたくなった。近々何か読むつ
もりだ。氏が執筆中、寝てる時にうなされていたという「長英逃亡」でも読もうかと思っている。