読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

宮部みゆき「あやし」

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 夏だから怪談だということで、車中本として暑い盛りに読んでいたのをようやく読了した。で、記事を書くころには夏も終わりになっちゃったというわけ。去年もこんなことしてたような気がする。ま、とりもなおさず久しぶりの宮部本である。もう何年ぶりだろう?ちょっとわかんないや。この人も初期のころは、出る本軒並み買って読んでたこともあったのだが、いまではちょっと敬遠している感じである。ちょうどS・キングと同じ扱いだ^^。新刊が出ると気にはなるんだけど、なんとなくスルーしちゃってるんだな。

 そんな宮部みゆきの直球ホラーをどうして今ごろ読んだのかというと、ちょっと前に読んでかなり惚れ込んでしまった菊池秀行の「幽剣抄」シリーズが、この「あやし」に触発されて書かれたということを知ったからである。あの傑作大江戸ホラーの云わば本家にあたる本書はいったいどんな出来栄えなんだと食指が動いた。

 で、どうだったのかというと、これは断然「幽剣抄」に軍配が上がる。さすが菊池秀行だ。インスパイアされて書いたといっても余裕で本家を凌駕している。しかし、こちらも印象深い作品はあって、例えば第二話の「影牢」なんて、因果応報の極致を描いたヘビーな作品で、これはなかなか凄惨な話だった。第四話「梅の雨降る」の展開もかなり凄まじく、いったいどういう着地をみせるのかとハラハラしながら読んだ。第六話「女の首」は怪談にしちゃあ、ちょっと出来すぎの感じだったが次の第七話「時雨鬼」は、ちょっと鳥肌もんだったし第八話「灰神楽」に登場する怪異の怖さは本書中の白眉といっていい出来栄えで思わず周りを見回してしまった。でも、やっぱり「幽剣抄」シリーズよりは落ちるんだな。あっちは作者がノリノリで書いてる雰囲気も伝わってきたしね。こんなこといってはなんだが、宮部みゆきの時代物は何冊か読んできたが、みなそれほどおもしろさが際立っていなかったように思う。「本所深川ふしぎ草紙」も「かまいたち」も「天狗風」もあまり印象に残ってないのだ。かろうじて「震える岩」が構成的にちょっと問題ありだったが描写で印象に残ってる場面があるくらいか。

 でも、「幻色江戸ごよみ」や「初ものがたり」それに「ぼんくら」や「日暮らし」「あかんべえ」「孤宿の人」なんてのは評判よかったし、折をみて読んでいこうとは思っている。

 そういえば、つい最近新刊出たんじゃないの?「おそろし」だっけ?誰かこれ読んで感想聞かせてくれませんか?