読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

島田荘司「盲剣楼奇譚」

盲剣楼奇譚 (文春文庫)

 

  久しぶりの島荘。で、吉敷シリーズなのだがこの文庫本で900ページ以上ある本書のほとんどがいわばサブストーリーである伝説の剣客 盲剣さまの話なのである。こんな逆転ある?かつて、御手洗潔シリーズの「アトポス」において『長い前奏』として描かれた部分はそれでも全体の半分だった。

 本書は、前後部分において事件の発端と解決として「吉敷」パートが描かれるが、ページ数にして200ページほど。発端が160ページ解決部分が40ページほどなのだ。だから、最初に断っておきます。吉敷シリーズだからといって、ここにミステリとしてのサプライズを期待してはいけません。本書の眼目は伝説の剣士、盲剣さまの活躍なのである。

 オビに書かれている『密室で起きた大量斬殺事件』という、凄惨なのにまるで夢の中の出来事のように解決する過去の出来事があって、どうやらそれが現在パートの吉敷が関わる事件に関係しているらしい。そこまで理解して、さて眼目の「疾風無双剣」のパートである。先程も書いたとおりこれが全体の2/3を占める600ページも続く。しかし、これが無類におもしろい。剣で身を立てようと仕官をのぞんでいる美貌の剣士がいて、めっぽう強くてほとんど無双だから行く先々で頼られる。本人は関わりを避けようとするのだが、それをほっておくわけもなく、彼はそれぞれの問題を剣で助けてゆく。また、美貌であるがゆえこの剣士のモテることモテること。しかしそのあまりにもハーレムな状態もおもしろさを損なわない。むしろ増幅させるのである。それもこれもこの美剣士のキャラクターのブレない造形ゆえなのである。

 文庫を手にしたら、これは京極本か!ってくらいの厚さだが、ひるむことはない。読み始めたらどんどんページが過ぎてゆく。これだから島荘好き!でも、中にはなんじゃこりゃあって本もあるんだけどね。