ロボサッカーという競技があるのを初めて知った。ロボコンていうのは聞いたことあったんだけどね。タイトルからもわかるように、本書に登場する中学生たちの名前が戦国武将と同じなのはご愛嬌。一応、キャラが被っているっていう部分はあるんだけどね。内容的には、ロボサッカーをめぐる中学生たちの不器用で熱い物語だった。
主人公である恩田伸永(ノブナガ)は、愛知県西部のいわゆる尾張地方から、東部の三河地方に親の事情で転校してきた中学生。東部と西部を分断する形で境川が流れており、同じ愛知県ながら、尾張と三河はその風土から人柄からまったく違っていた。だから、ノブナガは転校早々、どこかおっとりした三河の生徒たちを自然見下すようになってしまう。
歴史の覇者はやはり徳川家康であって、三百年も続く戦のない世を治めた事実は揺るがない。一方、信長も秀吉も天下をとって代がかわるまで家康の比ではない。最初に書いたとおり、本質的にこの事実は本書の展開に直接関係はない。だが、三河にとって異分子となるノブナガが直情的な性格で少しずつ化学反応を起こしてゆくさまは、そういった歴史的事実を踏まえた上で読んでいくとなかなかその枠組みが響いてくる。
ノブナガは、真っ直ぐな性格ゆえにいろんな場面でぶつかってゆく。自分を信じ、自分に自信をもち行動してゆく。もちろん、それは良い結果も生む。しかし、時としてその直情に背負い投げを喰らわせられることもある。そんなとき周りを見回し、自分以外の人たちの考えや意見を取り入れることの大切さを身をもって体験してゆく。小さいことにとらわれて、大事なことに目を向けていなかった自分に気づくのである。外を見回すことに気づくのである。飛び込むことの大切さ、ひいては冒険をおそれない勇気。それが自分を大きく成長させてくれたことに気づくノブナガ。そうやって、人は経験を積んで大きくなってゆくのである。
世界は広い。いろんな人がいる。それぞれの視点、思考、発想はその人の数だけある。そういった可能性の未来の切れっ端をノブナガは掴んだのである。