読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ジェフリー・ディヴァー他、エド・マクベイン編「十の罪業 BLACK」

「十の罪業」としてBLACK、REDの二冊が刊行されている。編者は大ベテランのエド・マクベインであり、彼自身の87分署シリーズの一編も収録されている。今回読んだのはBLACKの巻で、ここに収録されているのは以下の作品。 ジェフリー・ディーヴ…

豊﨑由美「ニッポンの書評」

つい先日、豊﨑由美氏と杉江松恋氏の二人が書評講座「書評の愉悦出張版」というトークイベントを開催された。西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」(表題作のみ)とJ・P・マンシェット『愚者が出てくる、城塞が見える」の二作品のどちらかの書評を800字~…

若かりし頃のベック版「ダーティペア」

むかし、むかし高千穂遥氏の「ダーティペアの大冒険」を読んでノックアウトされて自分でもその設定だけを借りて少し創作してみたことがあった。もう二十年以上前のことである。みなさん、あのユリとケイのはちゃめちゃなスペースオペラご存知?読まれたこと…

本を読むぼくを見ているぼく フランケンシュタイン風ドッペルゲンガーの物語

本を開いてみる。ざらついて黄ばんだページには、読めない文字が並んでいた。でも、ぼくはそれを一生懸命読んでいる。文字を読んでいる自分とそれを夢でみている自分がいる。不思議なことにぼくは自分を第三者として観察しているのだ。本の内容はわからない…

ベックのスティーヴン・キング遍歴 2

前回は、「IT」を読むまでの遍歴を紹介した。で、ようやくその年(1991年)の秋に「IT」が刊行され、首を引きちぎれそうなほど長くして待っていたぼくはすぐさま購入して読了した。マグナム・オーパスといわれる作品だけあって、これの面白さは抜群…

パスカル・ラバテ「イビクス」

BDコレクションの一冊。主人公であるネヴローゾフは、ジプシーの集落を通りかかったときに、一人の女に呼び止められ『世界が流血と大火で崩壊するとき、戦火が街を焼き尽くすとき、兄弟同士で殺し合うとき、あんたは金持ちになる。数奇な運命に導かれたあ…

西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」

西村賢太の師事する作家藤澤淸造は、大正時代の一時を流れ星のように駆け抜けた薄幸の人だった。性病から精神異常をきたし、警察の拘留や内縁の妻への暴行をくり返しあげくの果てに失踪、最終的には公園のベンチで凍死するというなんともお粗末な末路だった。…

ベックのスティーヴン・キング遍歴 1

5月13日に新宿のClub EXIT(非常口)という店で、『スティーブン・キング酒場』という催しが開かれた。「アンダー・ザ・ドーム」の刊行記念ということで、訳者の白石朗氏、表紙絵の藤田新策氏、そして文藝春秋の担当編集者である永嶋俊一郎氏の三方にくわ…

万城目学「偉大なる、しゅららぼん」

京都、奈良、大阪ときて、今度は滋賀が舞台なのである。万城目作品はけっこう続けて読んでいて、二作目の「鹿男あをによし」以外はすべて読んできたわけなのだが、本書はその中でも一、二を争う読後感の良さとおもしろさを兼ねそなえた本だった。しかし、断…

文藝春秋編 「奇妙なはなし アンソロジー人間の情景6」

ぼくの好きなアンソロジーなのである。この文春文庫から出てる【人間の情景】というアンソロジーシリーズは文藝春秋七十周年記念出版として八冊刊行されていて、本書はその六番目。「奇妙なはなし」って、いかにもミステリ好きが喜びそうなアンソロジーでし…

リンウッド・バークレイ「失踪家族」

ホームズ譚の挿話である「ジェイムズ・フェリモア氏の失踪」を例に挙げるまでもなく、劇的な失踪事件というものはミステリの題材として、とても魅力的だ。 本書はそんな不思議でショッキングな失踪事件で幕を開ける。14歳のシンシアが朝目を覚ますと、自分…

古本購入記  2011年 4月

四月は、スティーヴン・キングの「アンダー・ザ・ドーム」一色の月だった。ほとんどそれしか読んでな かったが、まさに至福のひと月だったといえる。やっぱりキングって、ぼくが海外文学に目を向けるきっ かけになっただけあって、すごい吸引力だな。いまに…