前回は、「IT」を読むまでの遍歴を紹介した。で、ようやくその年(1991年)の秋に「IT」が刊行され、首を引きちぎれそうなほど長くして待っていたぼくはすぐさま購入して読了した。マグナム・オーパスといわれる作品だけあって、これの面白さは抜群だった。節操ないくらい登場する数々のモンスターと、それに対抗する七人の子どもたち。この本のストーリーをここで紹介しても仕方がない。いつものB級ストーリーをそのままなぞらえるだけだから。とにかくキングの饒舌な語り、ここに極まれりといえる最高傑作だった。
「IT」の興奮が持続している間、キングの新刊は刊行されなかった。翌年(1992年)に角川書店からあの伝説のライフワーク作品であるガンズリンガーの第一巻「ガンスリンガー 暗黒の塔」が刊行される。とにかく読んでみたがこれはキングをして「完結させるのに三百年かかる」といわしめた本なので、正直あまり気乗りしなかった。ゆえにその十三年後(2005年)に新潮文庫からこのシリーズの新訳が刊行されたときも、なんとなくスルーしてしまったのだ。このシリーズはいまのところ読む予定はない。
「IT」が刊行された丁度一年後(1992年)の秋、文藝春秋から「ダーク・ハーフ」が刊行される。これはキングがよく取り上げる、いわゆる「作家物」のはしりの作品だ。これも正直あまりピンとこなかった。この作品のせいで、ぼくはキングの「作家物」があまり好きでなくなる。そして、その翌年(1993年)初の本格SF長編といえる「トミーノッカーズ」が刊行される。これは、またキングが久しぶりにブチかましてくれた作品だった。特にラストの阿鼻叫喚は背筋がゾクゾクする面白さだった。そうしてる間に1993年に刊行されていたキング初の評論集(?)である「死の舞踏」を読了。ここでの語りは好きなホラーについてのことなので、まさにとどまることを知らない勢いで、圧倒されまくりだった。1994年の夏『キャッスルロック最後の物語』と銘打たれた「ニードフルシングス」が刊行。あの「デッド・ゾーン」や「クージョ」や「ダークハーフ」や「スタンド・バイ・ミー」の舞台となった町が崩壊するまでを描いた作品だった。これは少し冗長にも感じたが、それでもやはり忘れがたい作品だった。とにかくこの本の表紙は大好き。1995年9月に「ドロレス・クレイボーン」、1996年3月に「マーティ」、6月に「ローズ・マダー」、8月に「暗黒の塔Ⅱ ザ・スリー」、9月に「ランゴリアーズ」、11月に「図書館警察」、翌1997年1月に「必携スティーヴン・キング読本 恐怖の旅路」を読了。そしてその年、新潮文庫からあの六ヶ月間毎月刊行というキング祭りが盛り上がった「グリーンマイル1~6」を読了。これがキング初の限りなく普通小説に近い作品だったんじゃないかな?1998年これまた新潮社からキング名義とバックマン名義の作品が二冊同時刊行される。そう、あの「デスぺレーション」と「レギュレイターズ」である。これもかなり熱くなった本だ。特に「デスぺレーション」の不気味さはハンパなかった。1999年、2000年とキング作品はあまり読んでおらず、「ゴーサム・カフェで朝食を」や「死霊たちの宴」などのアンソロジーで読んだのみだった。
文藝春秋のキング単行本はすべて初版で買っていたのだが、この年(2000年)に刊行されたキングの短編集『ナイトメアズ&ドリームスケープス』の二分冊「いかしたバンドのいる町で」と「ヘッドダウン」はとうとう買わなかった。ここに収録されている作品はほとんど他のアンソロジー本などで読んでいたので、あまりソソられなかったのだ。同年、キング初の試みで電子出版され五十万人がダウンロードし、アクセス不能状態になってしまったという「ライディング・ザ・ブレッド」が本になったので即購入、そしてようやくあの超大作である無削除版の「スタンド」が刊行される。これは期待に反して、あまりノレなくて読了するまでに八ヶ月もかかってしまった。この頃からキング離れになってくる。「骨の袋」は単行本を買わずに文庫になるまで手に入れなかったし、それもいまだに読めてない。「ドラゴンの眼」は便所本として、なんとか読了。2001年に文藝春秋から久しぶりの長編作品「不眠症」が刊行され、これは2005年に読了。それから四年後の2009年に短編集「夕暮れをすぎて」」と「悪霊の島」が刊行されるまでキング作品はまったく読んでいない。ここでまたキング熱が再燃。「アンダー・ザ・ドーム」に至るというわけ。だからぼくは「およそ十年の間キング作品の新刊を追いかけてなかった。だから「骨の袋」「トム・ゴードンに恋した少女」、「アトランティスのこころ」「ドリームキャッチャー」「ブラックハウス」「回想のビュイック8」「リーシーの物語」「セル」はみんな未読だ。これから追々読んで
いこうと思っている。さしあたり、次に読むのは「セル」かな。
長々と書いてきた。これでぼくのキング遍歴は終わりだ。海外作家では一番多く本を読んでいる作家がキングなのだ。というわけで彼は、ぼくの神様なのであります。
では、最後に実家のキング本コレクションを載せて終わりにしたいと思います。