読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

嘘をあやつる少女

嘘をあやつる少女が男を殺した。男は天に目を向け、法悦の表情でこの世を去った。

その後少女は南に向かい、道端にいた野良犬を蹴り殺し絶頂に達した。

少女の行方は知れない。あとには男と犬の骸のみ。

ぼくはその光景を目の当たりにし戦慄と恐怖を味わったが、同時に快楽も感じていた。

天から見下ろす光景として一連の出来事を俯瞰したぼくは、やがて自分の身体に舞い戻りカチッという音

とともに同化した。

まるでロボットに搭乗するみたいな感覚だなと思ったのも束の間、ぼくの目の前に大きな山が出現し、理

由もなくがむしゃらにその山を登っていくことにした。

山は険しく、おそろしく剣呑だった。道はなく、草木がはびこり、ツタが節操なくからまっている。何も

手にしてないぼくは、前に進むことさえ儘ならず瞬く間に傷だらけになってしまった。

どうしてこんな事してるんだろう?

少女の行方が気にかかる。