孤独を噛みしめる話だ。
繊細でピュアな心を持った主人公は、彼の信じることを大事に守ることで、望みを得ている。だが、友情と愛情を知ったことで、彼の心はゆらぎ始める。
ストイックで孤独な彼の言動を追う内に、こちらの情感が微妙にゆさぶられいることに気づく。人との関わりあいを極端に避けていた彼が信頼できる友を得、愛を与えあう彼女を見つけていくにつれて、こちらは彼の幸せを願って読み進む。
だが、ラストに彼の幸せは待っていない。辛い現実が待っている。
ラストで彼がとる行動は衝撃的でもなく、およそ予想はついてしまうのだが、それでもこちらの心に重くのしかかってくる。
なぜそうしたのかと、悔しくなる。
あまりにも素朴なこのストーリーは、ある意味「ティモレオン」で受けた現実の厳しさと同質のものだ。
世の中そんなに甘くない。めでたし、めでたしでは終わらないのだ。