読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

スチュアート デイヴィッド「ナルダが教えてくれたこと 」

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 孤独を噛みしめる話だ。

 繊細でピュアな心を持った主人公は、彼の信じることを大事に守ることで、望みを得ている。だが、友情と愛情を知ったことで、彼の心はゆらぎ始める。

 ストイックで孤独な彼の言動を追う内に、こちらの情感が微妙にゆさぶられいることに気づく。人との関わりあいを極端に避けていた彼が信頼できる友を得、愛を与えあう彼女を見つけていくにつれて、こちらは彼の幸せを願って読み進む。

 だが、ラストに彼の幸せは待っていない。辛い現実が待っている。

 ラストで彼がとる行動は衝撃的でもなく、およそ予想はついてしまうのだが、それでもこちらの心に重くのしかかってくる。

 なぜそうしたのかと、悔しくなる。

 あまりにも素朴なこのストーリーは、ある意味「ティモレオン」で受けた現実の厳しさと同質のものだ。

 世の中そんなに甘くない。めでたし、めでたしでは終わらないのだ。