途中、この奔放な筋運びがどうにもがまんできなくなったのだが、どうにか最後まで読み通した。
すると、どうでしょう。忘れられない作品となった。
本書の主人公であるネッド・ケリーは、いまなお多くの研究書や評伝が書かれ、本国オーストラリアでは人気のある義賊である。
彼の人生は、誤解と濡れ衣の人生だった。
自分だけを信じ、家族を愛し、良かれと思って行動してきたことすべてが裏目に出て、彼を追いつめてゆくのである。
好人物であるだけに、彼のたどる転落の人生は涙をさそう。
どうにか良い方に変わらないものかと彼の身を案じても、もう悲しい結末はわかっているからどうしようもない。
腐敗した権力と差別、それに歪曲された報道の犠牲になったケリー家族のなんと激しい生き様だろう。
激烈で、涙にあふれ愛にあふれている。
短い人生は、熱く泥にまみれ、けど美しく散っていった。
何が正しいかはわからない。
自分を信じて生きていくのが辛い道になるのか?
ネッドは正しかったのか?
不幸だったのか?
それとも満足していたのだろうか?