読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ピーター・ケアリー「ケリー・ギャングの真実の歴史」

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途中、この奔放な筋運びがどうにもがまんできなくなったのだが、どうにか最後まで読み通した。

すると、どうでしょう。忘れられない作品となった。

本書の主人公であるネッド・ケリーは、いまなお多くの研究書や評伝が書かれ、本国オーストラリアでは人気のある義賊である。

彼の人生は、誤解と濡れ衣の人生だった。

自分だけを信じ、家族を愛し、良かれと思って行動してきたことすべてが裏目に出て、彼を追いつめてゆくのである。

好人物であるだけに、彼のたどる転落の人生は涙をさそう。

どうにか良い方に変わらないものかと彼の身を案じても、もう悲しい結末はわかっているからどうしようもない。

腐敗した権力と差別、それに歪曲された報道の犠牲になったケリー家族のなんと激しい生き様だろう。

激烈で、涙にあふれ愛にあふれている。

短い人生は、熱く泥にまみれ、けど美しく散っていった。

何が正しいかはわからない。

自分を信じて生きていくのが辛い道になるのか?

ネッドは正しかったのか?

不幸だったのか?

それとも満足していたのだろうか?