航空パニック物といえば、なかなか小難しいものと勝手に思い込んでいたのだが、本書は旅客機のなんた
るかをまったく知らなくても全然問題ない、超オモシロパニック小説だった。
かつて映画で観たことのある「大空港」や「エアポート77」なんかと違って、本書ではただパニくった旅
客機を無事着陸させればいいのではなくて、新たな敵がからんでくるのである。事故の原因をつくった軍
と、旅客機が無事帰ってきたことによっておこる賠償問題を解決するため、故意に墜落させようと嘘の情
報をながす航空会社、そして機体に開いた穴によって減圧状態になり、それによって脳障害をひきおこし
『生ける屍』となってしまった乗客達。これらの四面楚歌の状況で、主人公は数々の危機にあいながら
も、なんとか機を無事生還させようと奮闘するのである。う~ん、久しぶりに真のヒーローに出会った。
手に汗握るとはこのことだ。
尚、ここに出ている表紙は、5年前に出た加筆決定版。本書は、あのネルソン・デミルが別名義で発表し
た小説だったそうである。なるほど、おもしろいわけだ。