読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

古本購入記  2010年6月

というわけで、また一ヶ月の成果を発表する機会が巡ってまいりました。あまり古本屋には行ってないと 一言メッセージでも書いていたのだが、それでも本は買っていて、数えてみると23冊22作品も買って いた。タイトルは以下のとおり。 「少女外道」皆川博…

藤沢周平「隠し剣孤影抄」

藤沢周平の市井物には慣れ親しんでいるのだが、正直剣客物はあまり読んだことがなかったのである。ついこの間読んだ「人生を変えた時代小説傑作選」に収録されていたあの有名な「麦屋町昼下がり」のみが唯一読んだことのある藤沢剣客小説だったのだ。(そう…

コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」

終末を迎えた世界。空は灰色に染まり、世界はひっそりと死に絶えている。そこを旅する父と子の物語。 彼らは南を目指す。そこに何があるのかわからないが、とにかく彼らは日々をぎりぎりの緊張感でやり過ごしながら南へ向って旅をしているのだ。 彼ら以外の…

大槻ケンヂ「新興宗教オモイデ教」

オーケンの処女小説が本書なんだそうで、これが胡散臭い宗教を扱っているからなかなか手を出す気にならなかったのだが、読んでみれば至極おもしろい本だった。新興宗教が舞台になっているのは間違いないのだが、本書で描かれるメインの要素は一種の超能力戦…

皆川博子「少女外道」

皆川博子の新刊が読めるとは僥倖ではないか。それも女史がもっとも得意とする短編集である。収録され ているのは七編、すべて戦争の影が色濃く落ちた作品である。 「少女外道」 「巻鶴トサカの一週間」 「隠り沼の」 「有翼日輪」 「標本箱」 「アンティゴネ…

迷い子

県境にある大きな橋まで30分。ぼくたちは無言で車に揺られていた。途中、蛇行する川のほとりにある 小さなバラック小屋に寄って、じゃい吉じいさんの様子を見る。いつものとおり、じいさんはぷっくり膨らんだ腹から膿を排出するゴム製のドレンを垂らして眠…

藤谷治「誰にも見えない」

主人公は14歳の女の子。彼女が誰に見せるでもなく思いのままを綴ったノートという体裁である。 これが、四十過ぎの親父が書いた本とは到底信じられない感性で描かれている。実際、中学生の女の子が読めばどれくらい違和感があるのか興味があったので、我が…

宇須里マナと師緒乃レイ

嘘みたいだった。彼女の唇はやわらかく吸いついてきた。 すべての夜が流れ、星が消えさり、部屋に音が満ちた。素敵な夜だった。 理解がついていかない。すべてを脳裏に刻みこもうと思った。笑い声と汗。 まだだ。まだだ。おれは天に昇った。 中は熱い。すご…

ポール・アンダースン「タウ・ゼロ」

本書が日本で刊行された当時(1992年)、それは一つの事件といってもいい話題となった。ま、それはSF好きの内輪だけの話なのだが、その興奮は本書の解説を読んでもよく伝わってくる。訳者の故浅倉久志御大はもとより、一般の人にもよくわかるように本…

朱川湊人「花まんま」

本書で描かれる世界は、ちょっと特殊だ。いや、もちろんこの著者のことだからファンタジーやホラーの要素が含まれているのは当然であって、ぼくが指摘しているのはその部分のことではない。 本書に収録されている六つの短編すべてにおいて、舞台は大阪の下町…

古本購入記  2010年5月

最近は、いっかな本を読む時間が捻出できなくて困っている。どういうこったろうね?そんなに生活パタ ーンが変わったわけでもないのに、ほんと不思議だ。でも、古本買いはコンスタントに続けていて、どん どん、どんどん本は溜まっていく。5月も驚くほどた…