読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

乾ルカ「プロメテウスの涙」

乾ルカ氏の初長編である。これは多大な期待をよせて読んだのだが、読了した今、少々とまどっている。なんとも奇妙な話であり、事の真相を知りたいという欲求のみに突き動かされてラストまで一気に読んだのだが、ちょっと肩透かしだったのだ。まず登場するの…

古本購入記 2009年5月度

いま早川文庫から片岡義男コレクションてのが出てるでしょ。ぼくは、この人まったくのノーマークで いままでの読書人生で、一冊も本を手にとったことがないのだが、今回のコレクションはなんだか気にな ってるのである。基本的にこの人はぼくの中では銀色夏…

アナトール ・ル・ブラーズ編著「ブルターニュ幻想民話集」

本書にはいまからおよそ100年ほど前のフランス、ブルターニュ地方の恐い話、不思議な話が97話収録されている。すべての話が、この地方に住む様々な人々から実際聞いてまわったインタヴューであり、いわば本書はフランス版遠野物語の様相を呈しているの…

今野敏「慎治」

この人がこれだけガンダムオタクだったとは知らなかった。なんせ、本書で紹介されるガンダム関係の記述は、そのまま研究書に書き写せるほど微にいり、細をうがつものなのだ。ぼくも一応ガンダム世代なので、初代のガンダムに関しては全作品テレビシリーズで…

菊地秀行「トレジャー・キャッスル」

菊地秀行といえば、出発点がソノラマ文庫ということで、ぼくも一連のシリーズは読んだ。その中でも特に好きだったのが八頭大の活躍する「トレジャー・ハンター」のシリーズだ。これは現時点で11作品、18冊が刊行されているのだが、ぼくが読んだのは8作…

万城目学「プリンセス・トヨトミ」

久しぶりの万城目作品だ。「ホルモー」を読んだ頃は、まだ誰もが万城目って誰?って思ってた頃だったのに、どうでしょうこの出世ぶりは。第二作の「鹿男」はなんとなく気がすすまなくて読んでないのだがこの第三長編は、タイトルのインパクトと今までで一番…

青い黄昏

青い夕方が神秘を誘う午後七時。ぼくは鼻唄をうたいながら、せせこましい町中をくねくね歩いていた。 目的地がどこかはわかっているのだが、その場所の名前がわからない。頭の中に建物の形は浮かんでいるしそこへの道順も知悉している。でも、そこがいったい…

映画「ザ・ミスト」

今日たまたま実家の衛星放送でこれを観た。観よう観ようと思って観たのではなく、たまたまつけたらや ってたので、観たのである。そしてラストまで釘付けになって、エンディングで凄い衝撃を受けたのだ。 いま、この記事を書く前に「ザ・ミスト」で検索した…

野村美月「文学少女と恋する挿話集①」

めでたく完結したこのシリーズ、まさかの新展開となって、うれしいやら戸惑うやらの混乱した心情なの だが、その前に本編に付随するこのエピソード集を読むことにする。 ここに収録されているのは本編では語られなかったサブストーリー。あの話の裏ではこん…

東雅夫「怪談ハンドブック 愉しく読む、書く、蒐める」

怪談のエキスパートといえば、この人なのである。いままで、ホラー系のアンソロジーやホラー作品の解説で名前を見かけて、ああこの人はこの分野に明るい人なんだなくらいの認識しかなかったのだが、本書を読んで、その生粋の怪談マニアっぷりにお見逸れしま…

上田早夕里「魚舟・獣舟」

この人は2003年に「火星のダーク・バラード」で第4回小松左京賞を受賞してデビューした人なのだが、この賞の受賞作はいままで一冊も読んだことがなく、いったいどれほどのレベルの作品が集まっているのかわからなかった。だが本書を読んで俄然興味がわ…

マルコス・アギニス「マラーノの武勲」

もともとぼくは無宗教で、神の存在はこれっぽっちも認めていない。しかし、宗教を否定しているわけではなく、それぞれの宗教の成り立ちや歴史の中での役割などには興味をもっている。 そう、人類の歴史を語る上で宗教というものは避けて通ることのできない重…

古本購入記 2009年4月度

一言メッセージでも書いてるが、いま図書館で借りているマルコス・アギニスの「マラーノの武勲」とい う本を読んでて、これが4月29日に返却予定だったのにまだ読了していないのである。残すところあと 100ページなのでもうすぐ読み終わるのだが、予約…