読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

菊地秀行「トレジャー・キャッスル」

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 菊地秀行といえば、出発点がソノラマ文庫ということで、ぼくも一連のシリーズは読んだ。その中でも特に好きだったのが八頭大の活躍する「トレジャー・ハンター」のシリーズだ。これは現時点で11作品、18冊が刊行されているのだが、ぼくが読んだのは8作品目までで9作目の「魔神国」第一巻目で中断している。このシリーズ、高校生の八頭大と太宰ゆきが世界を股にかけてお宝探しの大冒険を繰り広げる痛快作で、ぼく的には最初の「エイリアン秘宝街」「エイリアン魔獣境Ⅰ・Ⅱ」「エイリアン黙示録」「エイリアン怪猫伝」「エイリアン魔界航路」「エイリアン妖山記」「エイリアン邪海伝」の七作品は大傑作だと思っている。ジュヴナイルながら、巧みなストーリー展開に盛り沢山の衒学趣味。特にぼくが好きだったのは、怖さ引き立つセンス抜群のホラー・エッセンスだ。「秘宝街」に出てくる『飯田橋の怪夫婦』と『よだれ長者』、「黙示録」「怪猫伝」では全編オカルト色満開だし、「妖山記」での山中の一軒家の件などはいまだにぼくの読書体験の中でも一、二を争う恐怖場面である。

 そんなわけで、「吸血鬼ハンターD」や「魔界都市〈新宿〉」のシリーズよりも、このトレジャー・ハンター八頭大のシリーズにはいちだんと思い入れがあるのである。

 で、今回出たこのミステリー・ランドの最新刊がタイトルもそのもの「トレジャー・キャッスル」だったから期待満々で読んでみたのだが、これはちょっとイケなかった。登場人物の設定などは、いつもの菊地作品そのものなのだが、話の展開がすごくまどろっこしい。肝心の宝探しの場面についても、あまり新味もなかったし謎の中心となる若君鞭丸の話もイマイチ消化不良だった。子どもの読み物として、宝探しの話はいってみれば定番なのだろうが、本書はその王道を描いてながらもワクワクドキドキとは縁遠い仕上がりとなってしまっている。あと、ぼくが知っている限りでは本書はいままでのシリーズ物との関連作品ではないと思われる。といってもすべて読んでるワケではないので、保証のかぎりではないのだが^^。