読書の愉楽

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アラン・グリーン「くたばれ健康法!」

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 ユーモアミステリの定番として有名だった作品。いまではその存在を知らない人も多いかもしれない。

 でも、数年前に復刊されているので読んでる人も多いのかな?

 かのアントニー・バウチャーをして『カーの「盲目の理髪師」と並ぶユーモア・ミステリの最高傑作』と言わしめた作品である。

 物語は単純明快だ。全米に5千万の信者を持つといわれる健康法の教祖的存在だったマーリン・ブロードストンがホテルの自室で射殺死体となって発見される。部屋の入口には鍵が掛かっており、窓は隙間程度が開いていたが地上4階ということもあり、いわゆる密室状態だった。しかも、不思議なことに死体は背中を撃たれているのに着ているパジャマの上着には銃弾が貫通した痕がなかったのである。いったい、どうして犯人は死体にパジャマを着せる必要があったのか?

 ミステリ的には非常に魅力的な謎が提示されている。そこに論理がつけ入る隙などない奇妙さにあふれている。だが、これが解決してみれば実にシンプルで素晴らしいロジックを展開してくれるのである。

 はっきりいって感心した。なるほどすべての謎が見事に解明され、数々の符牒がおさまるべきところにおさまってしまう。解明のプロセスなど違和感なく、尚且つ自然に導きだされておりミスリードの手際の鮮やかさにも感心した。

 そう、ミステリ部分に関しては申し分なかった。思わぬメッケもんだと思った。

 しかし、その他の部分がさっぱりだった。ユーモアミステリということだがあまり笑えなかったし、話の流れが悠長すぎてモタついた印象を受けた。だから全体的になんともしまらない感じになってしまった。それにしてもこの表紙、最初はなんとも思わなかったが読了してから見てみると、ああ、そういうことだったのかと思ってしまった。ネタバレすれすれじゃないの^^。復刊された際に表紙も変わってるみたいだが、懸命な処置だと思われる。

 それにしてもこのトリックは、そうそう忘れることは出来ないだろうな。