読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

浅井ラボ「Strange Strange」

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 暗黒短編撰ということで、本書には台泰市を舞台にした4編の短編が収録されている。収録作は以下のとおり。

 

 ・「ふくろおんな」

 

 ・「ぶひぶひ♥だらだら」

 

 ・「人でなしと恋」

 

 ・「Last Day Monster」

 

 それぞれ暗黒といわれるだけあって、かなり生理的にキツイ描写が続く。人体損壊とか血まみれとかが苦手な人は読んではいけません。
 
第一話「ふくろおんな」は都市伝説っぽい話が俄にホラーになってしまう話。ふくろおんなの造形が秀逸で不気味。「座敷女」より怖かった。しかしこの話、ラストまで読んで?と思う。こういう終わり方になるのかという感じ。第二話「ぶひふひ♥だらだら」はいじめを発端になんとも不快な話が綴られる。途中、地下密室で繰り広げられる惨劇は有名ホラー映画を彷彿とさせる展開でこれは少々キツイですよ。そしてこの話もラストでやはり?となる。この作者はこういうフィニッシュを好む人なのかとちょっとうんざりする。第三話「人でなしと恋」は人食いの彼女をもった男の子の話。ぼくはこれが一番好み。本書の中でも一番長い短編で読み応えもあった。また『人食い』の生態や成り立ちもちゃんと描かれていておもしろかったし、これは賛否の分かれるところだろうが、主人公の男の子の変転する思考が展開に変化をあたえておもしろいと思った。そしてなによりボニーとクライドのような結末にはじめて納得がいった。

 

第四話「Last Day Monster」は浅井版「霧」だ。あのキングの名作のように閉鎖された空間での攻防ではなく、主人公である三十路前のOLは身の回りの物で武装して街に出てゆく。オリジナリティあふれるモンスターたちが節操もなく登場して「GUNZ」の大阪篇のように大殺戮を繰り広げるなか、彼女は賢く立ち回り危機を回避してゆくが、その過程で見事な変貌を遂げる。これもラストが閉じてない。

 

 全体的にすごくおもしろいのだが、どこか放りっぱなしの感が残ってしまう。それぞれの短編が微妙にリンクしているのはわかるのだが、そこに仕掛けはなくその設定も放りっぱなしのように感じてしまう。

 

 でもそれってぼくが真面目なのかなあ。こういう感じでもOKってことなのかなあ。よくわからない。

 

 気になった方はどうか読んでみて下さい。しかし、くれぐれもグロに耐性のある人だけね。