読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

皆川博子「鳥少年」

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 本短編集には十三の短編が収録されている。タイトルは以下の通り。

 「火焔樹の下で」

 「卵」

 「血浴み」

 「指」
 
 「黒蝶」

 「密室遊戯」

 「坩堝」

 「サイレント・ナイト」

 「魔女」

 「緑金譜」

 「滝姫」

 「ゆびきり」

 「鳥少年」

 相も変わらず、捩れてクールな不思議と無臭感の漂う素敵な短編集である。なかでも「血浴み」は記憶に残る作品だ。タイトルから連想して単純に血腥い話なのかと思っていたら、これがなんとも泥臭いムンムンと淫らな話で、ラストにいたってタイトルの意味がわかるのだが、なかなか衝撃的な話なのである。

 あと巻頭の「火焔樹の下で」も、書簡によってすすめられるミステリで、精神病院が舞台となっているのは定番としても、それをこういう風に捩れさせるところがさすが皆川博子である。「密室遊戯」「坩堝」「魔女」「滝姫」の四作はみなホラー風味のミステリで、なかでもラストにおいて世界が反転するかのような驚きをあたえてくれる「滝姫」が秀逸だった。表題作であるラストの「鳥少年」は、どうやったらこんな奇妙な話を思いつくんだと感心してしまう作品だった。主人公の淫蕩の気のある女性が素敵。いま読んでる「ディスコ探偵水曜日」に登場する室井勺子と微妙にリンクしちゃって、大変だった。

 というわけでやはり皆川短編は素晴らしいのである。本書を読めてぼくはとってもシアワセなのである。

 いったいどんな世界が広がっていくのだろう?という期待をまったく裏切られたことがないから素晴らしいのである。